「パパ育休1か月」実践企業から学ぶ「産後パパ育休」のあり方

記事のポイント


  1. 哺乳器トップシェアのピジョンは男性社員の1カ月間の育休取得率100%を実現
  2. 当初は取得率3割だったが、トップのコミットメントで社内の風向きが変わった
  3. 産休を取りやすい仕組みや風土づくりのヒントをまとめた

哺乳器トップシェアのピジョンは、2015年から男性社員の1カ月間の育児休暇取得率100%を続ける。パパが産休を取りやすい仕組み・風土づくりや休暇取得中のパパの過ごし方まで、「パパ産休」のヒントを紹介する。(オルタナ編集部・北村 佳代子)

ジェンダーギャップ指数で日本は146カ国中116位(2022年)と大きく後れをとっている。女性の社会進出には、男性の家庭進出も欠かせない。2022年10月に「産後パパ育休」制度が施行され、2023年4月以降、大企業は男性の育休取得率公表が義務づけられた。

「ひとつきいっしょ」。これは、ピジョンが2006年に導入した育児休暇制度の名称だ。その名のとおり、子どもが生まれた社員は、ジェンダーにかかわらず、子どもが1歳半になるまで1か月間の有給休暇を取得できる。

ピジョンでは、2015年から7年連続で、男性社員の取得率100%が続く。それでも取得した社員からは、「一か月でも短い」という声もあがる。

男性育休は数日間で十分と考える人には、驚きかもしれない。しかし、むしろ短いと感じる方が、グローバルスタンダードに近いと裏付ける報道もある。

米ウォール・ストリート・ジャーナル紙は4月8日、米国全体で育児休暇を取得する男性が5年前から3倍に増えたことを報道し、その中で、ニューヨーク州の男性の平均育休取得日数は、6.9週間と紹介した。

社内の風向きを変えたルール

ピジョンの「ひとつきいっしょ」制度導入は2006年にさかのぼる。「1か月未満だと、果たしてそれで育児をしたと言えるのか。まずは1か月休めなければ3か月休む選択肢も生まれない」(ピジョンコーポレートブランディンググループ笠井厚子氏)。

しかし導入後、2014年ごろまでは、男性社員の取得率は30%前後で推移していた。それが100%取得の方向へ大きく変わったのが、新たなルールだ。

「育児休暇を取得できない場合は、その理由を所属長が社長へ直接報告すること」。

トップのコミットメントは力強い。男性の育休取得に対しては、職場の理解が欠かせないからだ。

トップから全社に対して、男性社員も育休を取得するよう呼びかけたことで、取得する側も「取得していいんだ」と心の壁が取り払われた。「一方だけに手を打つのではなく、多方面に利くようにしかけたことが奏功している」(笠井氏)。

一般的に、所属長や同僚の多くに育休取得経験者がいない場合は、組織風土として、男性の育休取得が根付きにくい。

そのような組織風土が、これから育休を取得したいと考える男性社員に、職場へのうしろめたさや、キャリアへの影響について、不安を感じさせる要因の一つとなる。

ピジョンは、パートナーの妊娠がわかった時点で早期に報告できる体制も整備した。そうすることで今では、「いつ休暇を取るのか」「引き継ぎはどうするか」と、休むことが前提での会話が、自然に出てくるようになったという。

漠とした経済的不安を解消する

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北村(宮子)佳代子(オルタナ輪番編集長)

北村(宮子)佳代子(オルタナ輪番編集長)

オルタナ輪番編集長。アヴニール・ワークス株式会社代表取締役。伊藤忠商事、IIJ、ソニー、ソニーフィナンシャルで、主としてIR・広報を経験後、独立。上場企業のアニュアルレポートや統合報告書などで数多くのトップインタビューを執筆。英国CMI認定サステナビリティ(CSR)プラクティショナー。2023年からオルタナ編集部、2024年1月からオルタナ副編集長。

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キーワード: #ビジネスと人権

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