記事のポイント
- 鹿児島県で紅藻類カギケノリを使用した温暖化対策事業が立ち上がった
- カギケノリは牛に与えるとゲップのメタンガスを減らせるという
- メタンガスは温室効果がCO2よりも高く、紅藻は磯焼け防止にもなる
山川町漁業協同組合(鹿児島県指宿市)と、藻類の培養技術開発を行うアルヌール(東京・渋谷、星淳行代表取締役)が共同で2022年10月、紅藻類「カギケノリ」を使用した温暖化対策事業を立ちあげた。「カギケノリ」は、牛のゲップに由来するメタンガスの削減や磯焼け防止にも貢献するという。(オルタナ編集部・下村つぐみ)

アルヌールと山川町漁業協同組合が、海藻の「カギケノリ」を牛に与えることで、牛のゲップ由来のメタンガスを削減する新規事業「The Blue COWbon Project」を立ち上げた。「Blue COWbon」の名称は、英語のカーボン(二酸化炭素)と牛(cow)を掛けた。
具体的には、鹿児島湾に面する山川町で「カギケノリ」の海上養殖と屋内養殖の技術開発を行う。
今回のプロジェクトのきっかけは、オーストラリアの科学産業研究機構(CSIRO)などが発表した論文だった。オーストラリアでは「カギケノリ」を牛の飼料に混ぜ与えることで、牛の消化過程で発生するメタンガスを最大98%減少することが確認された。
国連食糧農業機関(FAO)によると、家畜由来の温室効果ガスは、世界の温室効果ガスの約14%を占めるという。その量は、すべての旅客輸送から発生する温室効果ガスの総量にも匹敵する。
海底の藻類が大幅に減少する「磯焼け」も深刻化な問題だ。2018年には鹿児島県阿久根市で、海水温の上昇からウニが大量発生した。これにより磯焼けが起き、藻類を餌とするプランクトンが減り、そのため漁獲量が減った事例もある。「カギケノリ」の養殖が進むことで藻場の回復拡大も期待できる。
鹿児島県は近海に天然の「カギケノリ」が自生し、肉用牛の飼養も盛んなため、今回のプロジェクトにとっては理想的な場所だった。山川町漁業協同組合では現在、「カギケノリ」を培養ができる状態まで育てている段階だそうだ。
アルヌールは2022年12月から、独自で培養した微細藻類がメタン生成をどのように抑制するかを解明する研究を始めた。同社は、5年以内に「カギケノリ」を用いた牛の飼料化を目指す。