記事のポイント
- 国際海運業界で「ネットゼロ」に向けた圧力と機運が高まりを見せる
- 7月に国連の専門機関の会合で船舶からのGHG排出削減戦略を改定する
- 船主の国際団体は会合に向けて「ネットゼロへの行程表」を示すよう求めた
国際海運業界で「ネットゼロ」に向けた圧力と機運が高まりを見せる。国連の専門機関である国際海事機関(IMO)が7月に開く会合でGHG排出削減戦略を改定する予定だ。それに向けて、船主の国際団体である国際海運会議所(ICS)は加盟国に対して「ネットゼロへの行程表」を示すよう呼びかけた。(オルタナ編集部・萩原 哲郎)

ICSは英・ロンドンに拠点を置く船主の国際団体で、40カ国、80%以上の船主が所属する。このほど、IMOが7月にGHG排出削減戦略を改定するのに合わせて、IMO加盟国各国に対して「ネットゼロ」への計画を示すように呼びかけた。
IMOによれば、国際海運のCO2排出量は世界の排出量の約2%相当にのぼる。2018年に示した「GHG削減戦略」では「30年までに08年比でCO2排出量40%以上削減」、「50年までにGHG排出量50%以上削減」、「今世紀中なるべく早期に排出ゼロ」という目標を設定した。
ポイントとなるのは、燃料の脱炭素化を実現できるかだ。
加盟国である日本は、昨年12月に開催された会合で、7月の改定で「50年までに国際海運からのGHG排出を全体としてゼロ」とし、ゼロエミッション船の普及を最大限推進することで「2040年に50%削減(08年比)」と掲げることを提案した。
日本は28年に商業化を目指して、水素やアンモニアなどを活用した「ゼロエミッション船」を計画する。
一方、欧州などからは「燃料の製造段階での排出分も含めたライフサイクル全体でのGHG排出を対象に削減目標を設定すべき」との提案がされた。船の電化などの取り組みが進む。
ICSはネットゼロの実現に向けて支援が必要であるとした。サイモン・ベネット副事務総長は「ゼロエミッション燃料を生産するために、新たな温室効果ガス排出量の削減目標の採択だけでなく」、それを実現するための「規制とインセンティブ」が必要だとした。