記事のポイント
- KDDIは法人顧客向けにスマホGHG排出量を実測値で開示する
- スマホの排出量算定は正確な値で算定することが難しかった
- 実測値で排出量を可視化するので、サプライチェーン全体の削減に貢献
KDDIは法人顧客向けにスマートフォンの利用による温室効果ガス(GHG)排出量を実測値(一次データ)で開示するサービスを始めた。国内の通信事業者としては日本初の取り組みだ。一般的にスマートフォン利用によるGHG排出量の算定は二次データで行われており、正確な値で算定することが難しかった。一次データで排出量が分かることで、法人顧客のサプライチェーン全体の排出量の削減につなげる。(オルタナS編集長=池田 真隆)

KDDIは5月31日、「グリーンモバイル」の提供を開始すると発表した。法人顧客のスマートフォン利用によるGHG排出量を一次データで可視化するサービスだ。同社と契約する法人顧客なら、全ての料金プランが対象で、追加料金は掛からない。
特徴は、GHG排出量を一次データで開示できる点だ。一次データとは、事業者が自ら取得したデータを基にGHG排出量を算定したデータを指す。一般的にスマートフォン利用によるGHG排出量は二次データで算定している。
二次データは、産業平均の排出原単位や排出係数(業界ごとの標準データ)などを利用料金などと掛け合わせて出す。実測値と呼ばれる一次データと比べて正確な値ではないので、推測値とも呼ばれる。
国際的には一次データを使う動きが広がっている。WBCSDが主導して開発したガイダンス「Pathfinder Framework」では、製品の排出量を明記する際には、一次データを使うことを強調している。
CDPは気候変動質問書において、スコープ3排出量の回答と併せて、当該排出量に占める「サプライヤーまたはバリューチェーンパートナーから得たデータを用いて計算された排出量の割合」の回答を求めている。
国内でも環境省はスコープ3の排出量の算定・報告について、一次データでの開示を推奨していく。2024年3月頃に、一次データでの算定・報告するための詳細なガイドラインを策定する予定だ。
環境・エネルギー分野に詳しい早稲田大学 大学院環境・エネルギー研究科の小野田弘士教授は、「カーボンニュートラルにおけるCO2排出量削減は、サプライヤーを含むサプライチェーン全体の削減に向けた取り組み自体が重要である。米国や欧州連合に比べると取り組みが遅れている日本において、前例にとらわれず、先進的な事例として先陣を切って実行することが非常に大事であり、KDDIが先頭に立ち推進していくことを期待している」と話す。