日本からも毎年平均80人以上の難民が出ている:難民該当性とは

避難を余儀なくされた世界の難民・避難民の数は1億人を超えた。シリア難民が最も多いが、ウクライナ戦争に加え、ミャンマーやアフガニスタンなどの情勢不安から難民の数は増え続けている。こうしたなか、日本からも難民が出ている事実はほとんど知られていない。(オルタナ副編集長=吉田広子)

難民・避難民の数は1億人以上に上り、世界人口の1%以上が避難を余儀なくされた
難民・避難民の数は1億人以上に上り、世界人口の1%以上が避難を余儀なくされた

UNHCR(国連難民高等弁務官事務所)の統計データによると、2022年の出身国が日本の難民の数は59人で、庇護希望者の数は138人だった。この10年の平均の難民数は、86.7人だ。

難民条約によると、難民とは、「人種、宗教、国籍、政治的意見やまたは特定の社会集団に属するなどの理由で、自国にいると迫害を受けるか、あるいは迫害を受ける恐れがあるために国籍国の外に逃れた人々」を指す。国境を越えられずに避難生活を送る人は、「国内避難民」「避難民」と呼ばれる。

UNHCRによると、難民条約は、「難民の取り扱いに関する最小限の人道的基準を設定したもの」で、「難民のための国際的協調と団結を強め、庇護を提供する場合に、政治的な理由で難民認定の基準を変更することがないように決められている」という。

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UNHCRはウェブサイトで、難民の権利や義務について、次のように説明している。

1)難民を彼らの生命や自由が脅威にさらされるおそれのある国へ強制的に追放したり、帰還させてはいけない(難民条約第33条、「ノン・ルフールマン原則」)

2)庇護申請国へ不法入国しまた不法にいることを理由として、難民を罰してはいけない(難民条約第31条)

2007年には日本出身の難民が538人も

UNHCRの難民に関する統計データ「Refugee Data Finder」で出身国を「日本」に設定すると、2000年以降の「難民」「庇護希望者」の数が出てくる。庇護希望者とは、「他の国の避難所にたどり着き、その国で庇護申請を希望する人々」だ。

「Refugee Data Finder」によると、日本出身者の数は、2013年は難民154人・庇護希望者48人、2014年は同257人・同61人、2015年は同140人・同68人、2016年は同53人・同83人、2017年は同44人・同99人、2018年は同42人・同114人、2019年は同39人・同111人、2020年は同40人・同121人、2021年は同39人・同134人、2022年は同59人・同138人だった。

2000年以降で、最も多いのは、2007年の難民519人、庇護希望者19人だった。

男女の割合は、年によって変わるが、ほぼ半数だ。受け入れ国は、米国、オーストラリア、ドイツが多い。

個人情報にかかわるため、他国に逃れた理由は公表されていない。カナダのメディアによると、福島第一原子力発電所事故を受けて、カナダ国内で難民申請を行った事例がある。

現在、国会で審議されている入管法改正案の是非を巡り、「難民該当性」に関する議論が起きている。難民保護を考えるうえで、日本は難民を受け入れる側だけではなく、受け入れてもらう側であることも意識しておきたい。

yoshida

吉田 広子(オルタナ輪番編集長)

大学卒業後、米国オレゴン大学に1年間留学(ジャーナリズム)。日本に帰国後の2007年10月、株式会社オルタナ入社。2011年~副編集長。2025年4月から現職。執筆記事一覧

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キーワード: #ビジネスと人権

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