記事のポイント
- NGOがパーム油利用企業112社にアンケート調査し、回答をもとに格付けした
- A評価の企業は今年も1社もなく、最高は不二製油・日清オイリオの2社だった
- 一方、製パン・マーガリン業界はアンケートに回答すらしない企業が多かった
パーム油生産が熱帯林を破壊するといわれて久しい。企業の環境意識が向上している最近は、どうなのだろうか。熱帯林関連のNGO7団体が運営するプランテーション・ウォッチ(東京・渋谷)が、パーム油を利用する日本企業の取組状況を評価する「企業格付け2023」を発表した。パーム油はパンや洗剤、バイオマスプラスチックなどに使われる植物油脂だ。A評価の企業はなく、不二製油グループ本社と日清オイリオグループがA評価に次ぐBBB評価だった。(オルタナ編集委員・栗岡理子)

■製パン、マーガリン業界などはアンケートに回答せず
プランテーション・ウォッチによる企業格付けは今回で7回目。パーム油を利用する日本企業のうち、売り上げ上位112社にアンケートを送り、評価した。
評価の結果、環境や社会問題に対処するためのグローバル・スタンダードである「森林破壊ゼロ、泥炭地破壊ゼロ、搾取ゼロ方針」(NDPE)を採用している企業の数は増えていることがわかった。しかし、その方針の実施状況を、独立した検証により十分確認できている高評価(A評価)の企業は、今年もなかった。
A評価に次ぐBBB評価は前述の2社で、うち日清オイリオグループは昨年度より評価を上げた。この評価を得るには、調達方針に違反した事例に関する対応状況や、取引を停止した調達先リストを公表する必要がある。
次のBB評価は明治、日清食品ホールディングス、雪印メグミルク、花王、伊藤忠商事、三井物産の6社。この評価を得るには、少なくとも自社の搾油工場リストを公表する必要がある。
BB評価に次ぐB評価は、少なくともNDPE方針を持つ必要がある。B評価に達したのは江崎グリコ、カルビー、森永製菓、味の素、パルシステム、J-オイルミルズ、日本ケンタッキー・フライド・チキン、ユニ・チャーム、三菱商事、丸紅、住友商事の11社だ。
今年は52社から回答が得られたが、アンケートを送付した残り60社からは回答がなかった。アンケートに回答しない企業には、製パンやマーガリン業界、外食サービス、食料品販売といった業界が多い。責任あるパーム油の調達に対する意識の低さが疑われる。
■バイオプラはパーム油問題に加担する可能性
プランテーション・ウォッチ事務局の中司喬之さんによると、日本でもRSPO(持続可能なパーム油のための円卓会議)認証がスタンダードになりつつあり、責任あるパーム油の調達という点では向上しているそうだ。しかし、「まだ不十分」だという。
「認証制度に頼るだけでは重大な環境・社会問題のリスクに対処できないと考えています。そのため、これらの仕組みと同時に、企業として調達方針を作成し、サプライチェーン管理を進めていくことが重要です」(中司さん)
最近では海水中で生分解すると謳われたストローやカトラリーなどの使い捨てプラスチックにも、パーム油が使われるようになった。
これについて中司さんは、「海洋プラスチック問題への解決策となりうる一方で、パーム油の問題に加担する可能性がある」として、パーム油利用そのものについてもっと議論する必要があると指摘した。
パンや菓子、マヨネーズなど多くの食品や、洗剤、さらにはプラスチックなどにも使われる植物性油脂・パーム油。避けるのは難しいが、使うならばせめて自然にも現地の人々の人権にも配慮した企業の油を使いたいものだ。