日本の従業員エンゲージメントは「世界最低」、米社調べ

記事のポイント


  1. 米国ギャラップ社が「グローバルワークプレイスの現状2023年版」を公表
  2. 「従業員エンゲージメント」の強い社員は日本は2年連続5%、世界124位
  3. 国民性や受身的な仕事に対する姿勢が要因か

米国の世論調査・コンサルティング会社のギャラップ社は14日、「グローバルワークプレイスの現状2023年版」を公表した。エンゲージメント(会社に貢献したいと感じる意欲)やストレスについて世界中の従業員の声を捉えたレポートだ。「従業員エンゲージメント」の強い社員の割合は2022年に世界全体では過去最高の23%に達した。一方で、日本は2年連続で5%にとどまり、順位は125か国中124位と低かった。自らに肯定的な評価を控える国民性、受身的な仕事に対する姿勢が要因の可能性もある。(オルタナ総研フェロー=室井孝之)

ギャラップ社の発表によれば、日本の従業員エンゲージメント(会社に貢献したいと感じる意欲)の強い社員の割合は5%にとどまった。

■世界の「従業員エンゲージメント」は2022年に過去最高の23%

レポートでは、従業員エンゲージメントの強い社員の割合が2022年に世界全体で過去最高の23%に達したことについて、「多くの労働者が自分の仕事を有意義に感じ、チーム、マネージャー、雇用主とのつながりを感じていることを意味する。世界の生産性とGDP成長率にとって朗報」と評価している。

一方、日本企業の従業員エンゲージメントは低いと指摘されている。日本は熱意あふれる(従業員エンゲージメントの強い)社員の割合がわずか5%で、調査対象125カ国中124位の結果だった。

主要国の従業員エンゲージメントの割合は、世界平均23%に対し、米国34%、インド33%、フィリピン31%、ブラジル28%、南アフリカ26%、タイ25%、インドネシア24%、ウクライナ22%、豪州20%、中国18%、ドイツ16%、韓国12%、英国&スペイン10%、フランス7%、日本とイタリアが5%である。

ギャラップ社のジョン・クリフトンCEOは、従業員エンゲージメントについて、「管理職はより良い聞き役、コーチ、協力者になる必要がある」「そうすればエンゲージメントは低コストでも高められる」と述べている。

同社が1万4000人以上のマネージャーを有能なコーチとして従業員を訓練する実証実験したところ、9-18か月後にはチームのエンゲージメントが8-18%高まったという結果を得たという。

日本では自らに肯定的な評価を控えるという国民性が影響か

日本企業の従業員エンゲージメントが低い理由について、日本では同社への回答で、周囲に配慮し、自らに肯定的な評価を控えるという国民性が災いして、芳しくない調査結果に繋がったとする指摘もある。

日本の従業員が勤勉で真面目なのは間違いなく、終身雇用が定着し、会社への帰属意識も強かった。

その一方で、仕事に対する姿勢が受け身で、経営陣や上司が決めたことに従い、自分の会社の方向性を従業員自らが提案する風土は乏しい。そんな傾向が日本の従業員エンゲージメントが低いとされる原因の一つではないだろうか。

企業の成長には、従業員が企業のパーパス(存在意義)を理解し、自らの担当業務が社会に対して直接的・間接的にどのような意味を持ち、貢献しているかを認識することが不可欠である。高い従業員エンゲージメントこそが成長のエンジンそのものだと私は確信する。

※日本の順位を「128位」と報じましたが、正確には「124位」でした。読者の皆様には心からお詫びするとともに、訂正致します。

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室井 孝之 (オルタナ総研フェロー)

42年勤務したアミノ酸・食品メーカーでは、CSR・人事・労務・総務・監査・物流・広報・法人運営などに従事。CSRでは、組織浸透、DJSIなどのESG投資指標や東北復興応援を担当した。2014年、日本食品業界初のダウ・ジョーンズ・ワールド・インデックス選定時にはプロジェクト・リーダーを務めた。2017年12月から現職。オルタナ総研では、サステナビリティ全般のコンサルティングを担当。オルタナ・オンラインへの提稿にも努めている。執筆記事一覧

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