日本の外国人技能実習制度で強制労働指摘、米国務省

記事のポイント


  1. 米国務省は「人身売買報告書2023」を公表
  2. 日本は4年連続、4段階の上から2番目に据え置かれた
  3. 人身売買解決には政府、企業、市民社会横断のグローバル連合が必要に

米国務省はこのほど、世界各国の人身売買に関する2023年版の年次報告書を発表した。188の国・地域を4段階で評価したもの。日本では外国人技能実習制度の下で強制労働の報告が続いていると指摘し、評価は4年連続で4段階の上から2番目の「対策不十分」に据え置いた。(オルタナ総研フェロー=室井孝之)

「人身売買報告書2023」(写真: 米国務省)

性的搾取を捜査・訴追する「政治的意志」の欠如も指摘

日本政府は2022年に、犯罪対策閣僚会議で「人身取引対策行動計画2022」を策定した。2023年4月に開いた有識者会議(座長:田中明彦国際協力機構=JICA=理事長)は、技能実習制度を廃止し、「人材育成」だけでなく「労働力」としての位置づけも明確にした新制度の創設を求める中間報告書を取りまとめた。

報告書は日本政府のこうした人身取引対策の行動計画策定や、技能実習制度の改革などを提言する有識者会議の設置については評価した。

その一方、技能実習制度で強制労働の報告が目立つにもかかわらず、実習生を搾取した者の訴追や処罰の発表がないと批判し、強制労働や児童の性的搾取を捜査・訴追する「政治的意志」が引き続き欠如していると指摘した。

4段階評価の第1グループは、米、英、独、仏、カナダ(以上G7メンバー)の他、スウェーデン、フィンランド、スペイン、豪州、オランダ、フィリピン、シンガポール、台湾など30カ国である。

第2グループは、日本、イタリア(以上G7メンバー)の他、ブラジル、ギリシャ、香港、インド、インドネシア、韓国、タイ、トルコなど106カ国。

第2グループの下に位置する第2グループウォッチリストでは、コンゴ民主共和国、エジプト、イラク、マレーシア、南アフリカ、ベトナムなど25カ国。

第3グループは、ロシア、ベラルーシ、中国、カンボジア、キューバ、カンボジア、イラン、北朝鮮、南スーダン、シリアなど24カ国で、リビア、ソマリア、イエメンの3カ国については4段階以外の「特別なケース」とした。

ロシアと中国の人権侵害を非難

ロシアはウクライナ侵攻により避難民を生じさせ、子どもたちに軍事的な教育や訓練を強要し、中国は新疆ウイグル自治区での少数民族を拘束していると断じた。

ブリンケン米国務長官は、「人身売買はすべての人が生命、自由、幸福の追求の権利を持っているという基本的な価値観に対する侮辱だ。コミュニティを侵食し、法の支配を弱体化させ、国家安全保障を弱体化させる。

人身売買のような地球規模の問題に取り組むには、政府、企業、市民社会を横断するグローバルな連合が必要だ」と強調した。

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室井 孝之 (オルタナ総研フェロー)

42年勤務したアミノ酸・食品メーカーでは、CSR・人事・労務・総務・監査・物流・広報・法人運営などに従事。CSRでは、組織浸透、DJSIなどのESG投資指標や東北復興応援を担当した。2014年、日本食品業界初のダウ・ジョーンズ・ワールド・インデックス選定時にはプロジェクト・リーダーを務めた。2017年12月から現職。オルタナ総研では、サステナビリティ全般のコンサルティングを担当。オルタナ・オンラインへの提稿にも努めている。執筆記事一覧

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キーワード: #ビジネスと人権

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