人材確保が難しい物流業界で、大橋運輸(愛知県瀬戸市)への応募は途切れず、業績は好調だ。下請け率も90%から5%にまで下がった。背景には、同社が進めてきたDEIの推進があった。同社では、LGBTQ当事者、障がいがある人、外国人、高齢者など、多様な人材が活躍している。鍋嶋洋行社長は「中小企業こそDEIに取り組んでほしい」と語る。(オルタナ副編集長・吉田広子)

鍋嶋社長は1998年4月、妻の祖父が創業した大橋運輸に入社した。勤めていた信用金庫を辞めるつもりは一切なかったが、大橋運輸の経営が債務超過状態であることを知り、立て直す決意をした。
「ドライバーは、誰でもできる仕事だと思われがちだが、そうではない。価格競争に陥るなかで、『運ぶ仕事』の社会的価値を高めたかった」。鍋嶋社長は、真意を語る。
「このままでは会社がつぶれる」という危機感から、当時社長だった義父に直談判し、同年11月に社長に就任した。
だが、物流業界を取り巻く状況は厳しかった。