記事のポイント
- 欧州議会がIUU(違法・無報告・無規制)漁業の根絶に向けて動き出した
- 2030年までにすべての漁船にGPS設置を義務化し、漁船の位置を把握する
- 一連の施策により、今後は漁業生産量1650万トンの増加が見込めるという
欧州議会の漁業委員会は2023年6月、IUU(違法・無報告・無規制)漁業の根絶に向け、EU漁業管理制度を見直すための法改正で合意した。新しい規制では、2030年までに欧州の管理下にあるすべての漁船にGPS設置を義務付けるなど5つの施策を盛り込んだ。IUU漁業による乱獲を防ぎ、水産資源の回復を促すことで、漁業生産量1650万トンの増加が見込める。(オルタナ編集部・下村つぐみ)

SDGsのゴール14「海の豊かさを守ろう」では、2020年までに海洋漁業の乱獲をなくすという目標が掲げられた。しかし、世界では地球温暖化による魚種の変化や、地域での乱獲により、水産資源の減少はますます深刻になってきた。
大きな要因であるIUU漁業は、「違法・無報告・無規制」に行なわれている漁業のことで、漁獲量を偽って報告することなどもそれにあたる。
今回改正される「EU漁業管理制度」では、このようなIUU漁業の規制を強化するため、5つの施策を新たに取り入れた。いずれも域内の漁船が、適正な漁法や操業場所を守っているかなどの監視を徹底する。
1) EUの管理下にあるすべての漁船に対し、GPSの設置を義務付ける
2) 全長18メートル以上の漁船では、船上監視カメラの設置を義務付ける
3) 漁獲を記録、報告するための電子システムの導入を義務付ける
4) サプライチェーン全体のデジタル・トレーサビリティを向上させる
5) EU加盟国内での漁業規制と罰則を統一する
国連食糧農業機関(FAO)が発表した「世界漁業・養殖業白書2022」によると、乱獲された水産資源が回復すれば、1650万トンの漁業生産量の増加が見込めることが明らかになった。
一般消費者にとっても、適切に管理された持続可能な漁業を行うことが、水産資源の増加につながるという正しい理解が求められる。