記事のポイント
- G20エネルギー相会合で共同声明を今年も採択することができなかった
- エネルギー危機のなか、再エネへの転換について各国で意見が割れた
- 「共同声明2年連続見送り」を環境政策に詳しい識者やNGOはどう見たのか
脱・化石燃料や再生可能エネルギーの導入について話し合ったG20エネルギー相会合が7月22日、インドで開かれた。日本からは西村康稔・経産相が参加したが、エネルギーの転換について各国の意見が対立し、「共同声明」を出すことはできなかった。G20での共同声明の見送りは2年連続だ。(オルタナS編集長=池田 真隆)

■G20が合意しないことは「責任の放棄」とNGO
G20エネルギー相会合では、「エネルギーの安全保障」「エネルギー移行を通じた技術ギャップへの対応」「エネルギー移行のための低コストファイナンス」などの論点について議論した。
会合では、欧州や米国などの先進国が脱・化石燃料や再エネの導入を強調したが、途上国などが火力発電に依存する姿勢を崩さず、意見はまとまらなかった。ロシアのウクライナ侵攻によるエネルギー危機も背景にある。
議長国を務めたインドは、合意した項目をまとめ、成果文書と議長総括として公表した。共同声明の見送りは、昨年のG20に続き2年連続だ。
国際環境NGO 350.org Japanの伊与田昌慶・チームリーダー代行は、世界の温室効果ガスの約80%を排出するG20の各国政府が脱化石・再エネへの転換で合意できなかったことについて、「責任の放棄だ」と厳しく指摘した。
今後予定している国連気候サミット、COP28に向けて、市民が政府に、気候正義に則ったエネルギー転換を求めていくべきだと訴えた。
オランダが本部の国際NGO スティールウォッチの松本志織・アジアコミュニケーション・リサーチ担当も、「再エネへの切り替えは、国際社会全体で見ると加速しているが、G20の意見相違が勢いを足止めする」とし、「年間排出量の7%を占める鉄鋼部門を脱炭素化し、再エネの大幅な拡大が気候を安定させるためには不可欠だ」と強調した。
■「1.5℃目標の達成がより難しく」