記事のポイント
- ごみ収集車やごみ処理施設などでの発火事故が全国で多発している
- リチウムイオン電池の不適切な廃棄が大きな要因だ
- 今一度、拡大生産者責任の適用を真剣に考える必要がある
モバイルバッテリーや小型扇風機、加熱式たばこといった小型家電に使われるリチウムイオン電池。広く普及する一方で、適切に廃棄されず、ごみ収集車やごみ処理施設などでの発火事故が全国で多発している。電子機器はプラスチック部分が多く、生活者がプラごみとして捨ててしまうことも多い。細田衛士・東海大学副学長(政治経済学経済学科教授)は、生産者の責任を問題視する。

この原稿も20回を越える連載になった。原稿を引き受けた当初は、1年4回の連載という約束だったが、編集者の誘いが上手かったこともあってか、ついその気になってここまで来てしまった。
正直、話題が尽きるのではないかと一時心配することもあったが、それは杞憂に過ぎなかった。次から次へと話のタネが出てくるのだ。実際、今回もどの話題で原稿を書こうかと迷ったほどだ。
散々迷った挙げ句、今タイムリーな話題、リチウムイオン電池問題を取り上げることにした。前にも取り上げたのに、また、さしてタイムリーとは見えないのに、なぜ今リチウムイオン電池問題なのか。そう思われても仕方がないが、実はとてもタイムリーな問題なのだ。
■ 使い終わった小型扇風機、どう捨てられるのか
それはこういうことだ。梅雨から真夏にかけての暑苦しい毎日、駅や電車の中で若い女性達が小さな扇風機で涼んでいる光景によく出会わす。それを見るにつけ、不安な思いにさいなまれる。
使われている時はよいのだが、寿命が終わった時、あの扇風機はどうなるのだろうか。きっと、普通のごみとして捨てられるに違いない。リチウムイオン電池の入った小型扇風機がごみに混じって捨てられるとしたらその後の処理が思いやられる。
パッカー車に詰め込まれ、焼却設備に送られるだろう。また、小型家電あるいは廃プラスチックとしてリサイクルに回ることもあるかもしれない。そのとき、圧縮や破砕によって発火する恐れがある。もしかしたら爆発する可能性すらありえる。そのようなことが起きたらごみの処理ラインに携わる従業員に害が及ぶ。
そうならずとも、処理ラインは一時停止してしまう。実際、そのようなことが自治体で起きている。結果として、ごみの回収、収集運搬が止まってしまうこともあるのだ。
■ ごみ捨て火災、4年間で被害額は111億円に
静脈産業で働く者です。弊社のリサイクルセンターでもこの問題では大いに悩まされています。小型扇風機もそうですが電子タバコもかなり「悪者」です。小さな火災はあまりに高頻度になってきたものですから、SDGs12番への回答にはなりませんが、「リチウム電池は入っているもの」「火災は起こるもの」を前提として作業をするしかありません。リサイクル施設の中に火災の起こりやすそうな箇所に「火花検知器」を備え「自動噴水」で大事になるのを防いでいます。それでもそのたびにプラントは運転は一時的とはいえ止まってしまうので業務効率には大きな影響があります。作る側にはそういった大きな危険を含んだ商品なのだという自覚が欲しいですし、捨て方までも規制する法制化が必要になるかもしれませんね。