
世界自然保護基金(WWF)はこのほど、「生きている地球レポート2012」を発表し、人類の経済・消費活動の増大を支えるためには地球が1.5個必要だと指摘した。
「生きている地球レポート」は、2年ごとに発表され、地球の生物多様性の劣化の現状と、その原因となっている人類による資源や環境の過剰な利用状況を数値化している。
WWFが用いているのは「エコロジカル・フットプリント」と呼ばれる指標だ。再生可能資源の人間による消費と、地球の再生能力を対照し、生態系に対する人間の需要を測る。
それによれば、人間が1年で消費する再生資源を地球が完全に再生するには、1.5年かかるという。つまり、私たちは、地球1.5個分を必要とする生活を送っていることになる。この指標は高所得な国ほど高い傾向にあり、先進国で暮らす人間ほど、環境負荷の大きな暮らしをしているのが分かる。
また、生物多様性も低下している。2600種類以上、約9000の個体群の生物から採取したデータを基に算出する「生きている地球指数」によれば、1970年代と比較し、世界全体では、28%、熱帯では過去40年で60%も生物多様性が低下している。この指標は低所得な国ほど低下が著しく、高所得国が、低所得国から資源を輸入していることが一つの要因だと考えられる。
今回のレポートは、「リオ+20」開催を視野に入れて作成されたもので、新興国の経済台頭と、2050年には90億人を超えるというスピードで進行する人口増加に伴う持続利用な資源活用の在り方に焦点を当てている。
WWFの広報担当者は「『生きている地球レポート』はWWFが発行する地球環境に関するレポートのうち、もっとも重要なものだ。世界各国の首脳が集まり、環境問題や資源活用について新たな解決策を策定する機会の『リオ+20』で、全ての参加者にとって重要な参考資料とされるべきだ」と話している。(オルタナ編集部=赤坂祥彦)