記事のポイント
- 旅する学校が「海のごちそう地域モデル事業」のイベントを三重県で開催した
- 海藻を食べる魚を地域で積極的に消費し、磯焼けを防ぐ
- 日本財団の「海のごちそう地域モデル事業」は全国10地域に広がった
「食」をきっかけに、海の課題を伝える日本財団のプロジェクト「海のごちそう地域モデル事業」が全国に広がっている。地域に根ざした教育を推進する旅する学校(三重県熊野市)はこのほど、三重県で同プロジェクトの一環として、磯焼けを防ぐ取り組みを開始した。磯焼けの原因となっている海藻を食べる魚を積極的に消費するように呼び掛ける。(オルタナ編集部・下村つぐみ)

日本財団は2021年から「海と日本プロジェクト」の一つとして、「海のごちそう地域モデル事業」を行う。「食」をもとに地域の海の課題を、地域に広く伝えることを目的とした事業で、北海道函館市の「北上してきたブリの消費向上」や鹿児島市の「深海魚の商品化」など全国10地域で推進している。
今回は、旅する学校が主体となり、三重県で起きている磯焼けの解決に向けたイベントを開いた。地元の子どもたちや漁師、漁協関係者など61人が参加した。
磯焼けとは、海藻が繁茂し藻場を形成している沿岸海域で、海藻が著しく減少し、海藻が繁茂しなくなる現象だ。磯焼けが起こると、水質汚染や生態系の不均衡化などの問題が起きる。
三重県志摩市の水揚げ量は2019年に比べ、アワビは9割、サザエは7割も減少し、磯焼けの影響が深刻だ。
海水温が上昇したことで、海藻を食べるブダイやアイゴといった魚が増殖し、磯焼けが進んでいるという。
しかし、こういった魚は美味しくないイメージがあり、流通ルートもなく、漁師も好んで水揚げしないそうだ。そこで、ブダイやアイゴが市場に出回るよう、地域ぐるみで価値創出に取り組んでいく。
この課題解決のため、具体的には、地域内外の飲食店や地元の子どもたちとのメニュー開発や啓発活動、漁師が水揚げしたこれらの魚を積極的に買い取る試みを行う。いずれは、地元の学校給食や飲食店への直販などへの展開もめざす。
子どもたちの海離れや少子高齢化による海の課題を伝える人材不足などの課題解決にも貢献していく。