ジャニーズ性加害を認定、同族経営のガバナンス不全を指摘

記事のポイント


  1. 「外部専門家による再発防止特別チーム」がジャニーズ性加害問題の調査結果を公表
  2. 「極めて悪質な事件」であると認め、被害者の救済措置や社長辞任を求めた
  3. 調査報告書は「同族経営でガバナンス不全に陥っている」と指摘した

ジャニーズ事務所が設置した「外部専門家による再発防止特別チーム」は8月29日、ジャニーズ性加害問題の調査結果を公表した。「極めて悪質な事件」であると認め、被害者の救済措置や、藤島ジュリー景子社長の辞任などを同社に求めた。座長の林眞琴氏(弁護士)は、「これまで変わる機会はあったが、隠ぺいし続けた。同族経営でガバナンス不全に陥っている」と指摘した。(オルタナ副編集長=吉田広子)

再発防止特別チームは2023年5月から8月にかけて、被害者やジャニーズ事務所関係者など41人にヒアリング調査を行った。調査は、元検事総長の林弁護士、飛鳥井望氏(精神科医)、齋藤梓氏(臨床心理士)の3人が中心となって進めた。

特別チームは、性加害問題の原因の一つとして、同族経営の弊害を指摘した。報告書では、「創業者たる経営者による違法行為などが行われた場合には、誰もそれを止めることができない。本件はまさにその問題が顕在化したパターンである」と指摘した。

藤島社長に関しては、問題を認識しながらも調査してこなかったとして、辞任すべきだとした。ジャニーズ事務所と取引のある企業に対しては、「『国連ビジネスと人権指導原則』に基づいて、企業は自社だけではなく、取引先の人権侵害を防止する責任がある」とした。

被害者救済に関しては、被害者救済の公正・中立を図るため、外部専門家からなる「被害者救済委員会」(仮称)を設置し、同委員会が被害者の申告を検討して補償の要否、金額等を判断し、不服申立てを処理できるようにすべき、とした。

再発防止策としては次のとおりまとめた。

・被害者に対する謝罪と救済
・社長辞任と同族経営の弊害の防止
・人権方針の策定と実施
・研修の充実(人権尊重に関する研修やタレントに対する研修など)
・ガバナンスの強化(ジュリー氏の代表取締役社長辞任と同族経営の弊害の防止、社外取締役の活用など)
・CCO (チーフ・コンプライアンス・オフィサー)の設置(外部から人権に関する専門家を採用し、経営から独立し、担当する職務に関して取締役会に意見を述べる権限を付与する)
・メディアとのエンゲージメント(対話)
・再発防止策の実現度のモニタリングとその公表

林弁護士は「エンターテインメント業界が性加害やセクシュアル・ハラスメントが生じやすい構造であれば、ジャニーズ事務所は『再出発』するだけでなく、率先してエンターテインメント業界全体を変えていくという姿勢で臨んでほしい」と訴えた。

yoshida

吉田 広子(オルタナ輪番編集長)

大学卒業後、米国オレゴン大学に1年間留学(ジャーナリズム)。日本に帰国後の2007年10月、株式会社オルタナ入社。2011年~副編集長。2025年4月から現職。執筆記事一覧

執筆記事一覧
キーワード: #ビジネスと人権

お気に入り登録するにはログインが必要です

ログインすると「マイページ」機能がご利用できます。気になった記事を「お気に入り」登録できます。