「カーボンニュートラル」が大きな曲がり角に差し掛かった。菅義偉前首相の「2050年カーボンニュートラル宣言」を機に、日本でも同様の宣言をする企業が増えたが、カーボンニュートラル宣言を見直し、ネットゼロを掲げるサステナ先進企業が相次ぐ。連載「曲がり角のカーボンニュートラル」では、自称カーボンニュートラルからネットゼロに移行する企業の動きを特集する。カーボンニュートラルもネットゼロも温室効果ガスの排出量を「実質ゼロ」にすることを指すが、両者には大きな違いがある。

第1回: 曲がり角のカーボンニュートラル: 厳密な定義なく誤用も
「カーボンニュートラル」が大きな曲がり角に差し掛かった。菅義偉前首相の「2050年カーボンニュートラル宣言」を機に、日本でも同様の宣言をする企業が増えた。だが、その定義はあいまいで、企業の中でも誤用が目立つ。最近ではカーボンニュートラルや、安易な「カーボンオフセット」を止めると宣言する企業も増えてきた。
第2回: ISOが年内にも新規格、「曖昧なカーボンニュートラル」排除
国際標準化機構(ISO)が「カーボンニュートラル」の厳格化に乗り出した。ISOは、「カーボンニュートラル」を認証する国際規格を年内にも発行する予定だ。自称カーボンニュートラルが乱立する中、国際的な指標ができる意義は大きい。
第3回: アマゾンもセブンも脱落か: ネットゼロ基準整合企業は4%
気候変動に対応するため、「1.5度目標」を実現しようと野心的な目標を掲げる企業は増えているが、進捗はまだら模様だ。英シンクタンクによると、世界の大手上場企業2000社のうち、ネットゼロ目標を掲げる企業の数は929社に上った。しかし、そのうち「ネットゼロ」の定義に整合する企業の割合は、4%にとどまった。
第4回: 海外でカーボンニュートラル宣言を見直す企業が相次ぐ
ウォルマートやネスレなど海外企業の間で、自社のカーボンニュートラル宣言の中身を見直す企業が相次ぐ。その背景には、環境にやさしいと見せかける「グリーンウォッシュ」に対する消費者の反発や、安直なカーボンオフセットを疑問視する声がある。安易なカーボンニュートラルは、コンプライアンスやレピュテーションリスクを招きかねない。
第5回: 脱炭素目標で環境NGOとメガバンクのギャップは埋まるか
国内外の環境NGOは2020年から、国内3メガバンクに対して気候変動についての株主提案を続ける。特に「2030年までに石炭火力発電からの撤退」など「2030年ターゲット」を重視する。一方メガバンクは、「投融資ポートフォリオからの GHG 排出量(スコープ 3)2050年ネットゼロ」を目指す。双方のスタンスには大きなギャップがあり、縮まる可能性は低い。