
旺盛な繁殖力で拡大していく放置竹林の竹は、生物多様性の低下や山林の土砂崩れの元凶として駆除される。そこで、この竹を使ってイネを育て、ジャンボタニシによる食害を防ぐ取り組みが始まっている。
破砕機器メーカーの西邦機工(福岡県大野城市)は、繊維質で堅い青竹を1時間に最大400キログラム処理できる「ラブ(rub)マシーン」を約10年かけて開発した。前処理なしで投入された青竹を、100トンの高圧で押しつぶし、数秒で綿状の「竹のもみずり」に加工する機械だ。
竹のもみずりは、生ごみ処理用のコンポスト基材になる他、畜産業や農業の現場で活用されている。
同社は2011年より、九州大学大学院農学研究院の山川武夫准教授の協力を得て、竹のもみずりをイネの苗床に使う効果を検証してきた。
2012年7月上旬の調査では、ジャンボタニシの食害防止に有効であることが示された。福岡県内の水田で小規模な比較実験を行ったところ、苗床に竹のもみずりを使ったイネの茎には食害がなかった。
竹に多く含まれるケイ酸によって硬くなった茎を、ジャンボタニシが避けた結果だと考察された。
同社はこれまでに、竹のもみずりを苗床に使うことによる収量の増加や食味の向上も確認している。実験に協力している農家は、苗床が軽く運びやすくなった点も評価している。
佐賀県農業試験研究センターも、山土や人工繊維のロックウールの苗床と比較して、イネの根が最も長く密に成長することを認めた。
なお、ジャンボタニシは、正確にはタニシではない。南米原産のリンゴガイの仲間で、1980年代に食用として持ち込まれて野生化した。西日本を中心に大繁殖してイネを食害し、農家に損害を与えている。
モウソウチクなど、地下茎を伸ばして拡大し続けるタイプの竹も、暖かい西日本を中心に繁茂して山林を荒らし、駆除の対象となっている。
増え過ぎた竹をジャンボタニシの食害防止に役立てられれば、地域内の問題を2つ同時に解決できる可能性がある。(オルタナ編集委員=瀬戸内千代)