記事のポイント
- 中国の輸入禁止により、輸入用の水産物が行き場をなくしている
- 三井住友海上は社員食堂で国内水産物を積極的に提供、ワタミは店舗で
- 農水省は「#食べるぜニッポン!」でSNSから呼びかけた
中国政府が8月24日、福島原発の処理水の放出に伴い、日本からの水産物の輸入を全面的に禁止した。輸入用に漁獲された水産物が行き場をなくしている状況だ。三井住友海上は社員食堂で国内水産物を積極的に提供し始めた。ワタミは日本の漁業応援キャンペーンを始め、店舗で提供する。農水省は「#食べるぜニッポン!」でSNSから呼びかけた。(オルタナ編集部・萩原哲郎、下村つぐみ)

福島原発の処理水放出に伴った、中国政府の水産物の輸入禁止の影響は多大だ。日本全国で漁獲済みの魚の活用が滞り、漁に出ない選択をする漁師も出てきた。
中国は日本にとって世界1位の水産物の輸出相手国で、2022年の輸入額は871億円だった。
漁業者や水産関係事業者を応援するため、国内での水産物の消費を進める動きが活発になってきた。
■10日間で約1トンのホタテ消費へ
ワタミは日本の漁業応援キャンペーンを始めた。その第一弾として、9月11日~20日まで「ミライザカ」と「鳥メロ」の国内店舗でホタテを使用した商品を販売する。
同社広報担当者によれば、「香港で22店舗展開しているが、処理水の放出直後から1週間の売上が10~15%ダウンした」という。水産物だけでなく「日本食全体に影響が出ている」とのことだ。
販売する商品は、「ホタテのカルパッチョ」や「ホタテのっけ寿司」など、それぞれのブランドで4商品ずつ。20日までで見込む消費量は約1トンだ。
今後はマグロなどを使用した商品を展開する予定だ。「継続してキャンペーンを実施して、日本の漁業を応援していく」という。
三井住友海上は2021年から定期的に、社員食堂で福島県の三陸や常磐の水産物を使ったメニューを提供する「福島県フェア」を続けてきた。経産省が主導する「魅力発見!三陸・常磐ものネットワーク」や「ふくしま応援ネットワーク」に参画してきたことがきっかけだという。
応援したいという社内からの声もあり、キャンペーン中は毎日約120食を売上げ、直近では3日間で約1000食を突破した。
同社は、社内に福島復興支援に関する専用HPを開設し、福島県の物産展を開催するなど支援を続けていく。
■農水省のSNS表示回数は2万回超えに
野村農林水産大臣は9月12日、記者会見で「ぜひ職員食堂でホタテだけではなくて、水産物を活用した料理を提供してほしい」と各省庁に依頼した。
これを機に、農水省の社内食堂ではホタテを使用したメニューを追加した。オルタナが取材したところ、ほとんどの省庁は、より多くの水産物を入荷する検討をしている。
農水省は9月7日、SNSで「#食べるぜニッポン!」の投稿を始めた。ユーザーがホタテやブリ、タイなど影響を受ける水産物を用いた食事の様子を写真に撮り、ハッシュタグを付けて拡散していくものだ。
スーパーの寿司や自ら料理したイワシの梅煮などの応援する投稿が見られた。農水省の同投稿の表示回数は2万回を超えた。
一方で、批判的な投稿も多く、原発処理水の海洋放出にはまだ多くの議論が必要だ。