記事のポイント
- ITや金融系を中心に、米国にはイスラエルとの結びつきが強い企業が多い
- ハマスによる攻撃後、イスラエル支持を表明した企業の数は172社に上る
- 米スターバックスは「パレスチナ連帯」を掲げた労組と訴訟合戦になった
米国にはIT系や金融機関を中心に、ユダヤ系のCEOや、イスラエルとの結びつきが強い企業が多い。米エール大学の調査によると、軍事組織「ハマス」による攻撃以降、イスラエル支持を表明した企業の数は10月28日現在、172社に上った。民族を巡る様々な対立は、米ビジネス界にも飛び火した。(オルタナ編集部)

米国にはメタのマーク・ザッカーバーグ創業者やグーグルのラリー・ペイジ創業者、スターバックスのハワード・シュルツ名誉会長など、ユダヤ系CEOの枚挙に暇がない。
ハマスが10月7日、突如イスラエルを攻撃すると、J.P.モルガン・チェース、ゴールドマン・サックス、グーグル、メタ、マイクロソフト、ヒューレットパッカードなどの経営幹部は、即座にハマスの攻撃を非難する公的な声明を出した。
これら企業の経営幹部は、電話でのインタビューやSNSへの投稿を通じて、イスラエル国民との連帯を表明し、その多くは、数百万ドルもの人道的支援と、イスラエルの従業員保護に向けた詳細な取り組みを説明した。
■「親イスラエル」表明の企業は172社に
米エール大学チーフ・エグゼクティグ・リーダーシップ・インスティテュート(CELI)のジェフリー・ソネンフェルド教授は、同大学のホームページ上で、「親イスラエル」を表明した企業名を日々更新して公開する。10月28日現在、その数は172社に上る。
ソネンフェルド教授は、米国の著名なCEO(最高経営責任者)たちに対して、数十年間にわたって、コーチングを行ってきたことでも知られる。CELIは10月26日、ウクライナ侵攻を受けてロシアでの事業を縮小した1000社超のグローバル企業を、その「撤退度」からAからFの6段階による評価も公開した。
中東カタールの国営メディア・アルジャジーラは、ロシア・ウクライナ問題で大企業が取った動きに比べると、イスラエル・ハマス紛争での反応は鈍いと報じる。「ロシアによるウクライナ侵攻で声高に立場を主張した有名ブランドの多くは、中東での紛争には言及していない」(10月13日のアルジャジーラ報道)
アルジャジーラは、マーケティング業界誌の「キャンペーン・アジア」のラハト・カプール編集者の言葉として、イスラエルとパレスチナの紛争には、繊細で複雑な力学が絡むため、通常なら社会正義を表明する企業も、特に取り組みにくい状況にあると報じた。
また同紙の中で、オックスフォード大学サイード・ビジネス・スクールでマーケティングを専門とするフェリペ・トマズ准教授は、利害関係が大きくなる戦争に関しては、「企業ブランドはしばしば暴力を非難する一般的なコメントにとどまるか、何も言わないことを好む」と解説した。
■政治・宗教的な問題に関する、企業の「立ち位置」表明の難しさ
■米スターバックス、「パレスチナ連帯」を掲げた労組との訴訟合戦に
■ウェブ・サミット社CEOの発言にテック企業から猛烈な批判
■パレスチナへの同情を示した学生の雇用を断った企業も