「環境配慮は当たり前」、LIXIL常務が欧州で感じた危機意識

記事のポイント


  1. 脱炭素と成長の両立を探り、企業はビジネスモデルの変革に挑む
  2. リクシルは2023年11月、窓の価値を再定義し、新戦略を発表した
  3. 背景には、欧州視察で感じた危機意識があるという

脱炭素と経済成長の両立を実現するため、企業はビジネスモデルの変革に取り組む。住宅設備機器大手リクシルは窓の環境負荷をライフサイクル全体で評価し、価値を再定義した。背景には、欧州で感じた危機意識がある。(オルタナS編集長=池田 真隆)

窓事業の新戦略を考えた背景を話す、リクシルの小林智・常務役員

「欧州視察で痛烈に感じたのは、メーカーとして環境配慮はもはや当たり前ということ。環境配慮をした上でいかに付加価値を出せるかが問われている」。こう話すのは、リクシルの小林智・常務役員だ。

この危機意識からリクシルが考案したのが2023年11月に発表した、窓事業の新戦略「GREEN WINDOW(グリーンウィンドウ)」だ。

窓の環境負荷をライフサイクル全体で評価し、東西南北によって気候条件が異なる日本列島の特性に応じた「地域最適窓」を展開する。ドイツなど環境先進国が取り組む「パッシブデザイン」の考え方で省エネと快適の両立を図る。

同社は、窓の環境性を原料調達から廃棄までのLCA(ライフサイクルアセスメント)で算定する方法を研究していた。同社が独自に構築した算定式で評価すると、寒冷地では、居住時のエネルギー利用によるCO2排出量が7割だった。この居住時の排出量を、「オペレーショナルカーボン」という。

一方、温暖地になるほど、「原料調達」「製造」「住宅施工」「廃棄」での排出量を指す「エンボディドカーボン」が7割だった。

同社は、オペレーショナルカーボンの対策には、断熱性能の高い樹脂窓を、エンボディドカーボンには、アルミリサイクルの採用が有効とした。これまで窓については断熱性能で選ぶ傾向にあったが、LCA評価によって、地域に合わせた最適窓を提案していく。

「窓選びの正しい選択肢を提供したい」

小林常務は、「窓の価値は、断熱性能に偏り過ぎていた。断熱性も大事だが、窓メーカーの果たすべき役割は、それだけではない。窓から景色や景観を見られるようにしつつ、太陽光や熱、風を利用して、快適な空間を演出していく。窓メーカーとして、窓選びの際の正しい選択肢を提供する」と話す。

この戦略を本格化するのは、2024年の春過ぎからだ。工務店向けに住宅のCO2排出量をLCAで評価する算定サービスを無償で提供する。

このサービスを通じて、工務店から消費者に新しい窓選びのモノサシを伝えていく。小林常務役員は、「おそらく初期段階で共感頂ける工務店は2割程度」と見込む。この2割を起点に展開する考えだが、「工務店が自分の言葉で説明できるようになると一気に拡大していく」と話した。国や自治体とも協力して、窓選びの新しいスタンダードをつくる。

同社の売上比率は主に日本国内だが、今後はアジア地域の比率もこの戦略で伸ばす。インドやインドネシア、ベトナム、タイなどの市場を狙う。

「新興国は成長を続けているが、日本と同じように環境への気付きはいずれ訪れるはずだ」(小林常務役員)。

M.Ikeda

池田 真隆 (オルタナ輪番編集長)

株式会社オルタナ取締役、オルタナ輪番編集長 1989年東京都生まれ。立教大学文学部卒業。 環境省「中小企業の環境経営のあり方検討会」委員、農林水産省「2027年国際園芸博覧会政府出展検討会」委員、「エコアクション21」オブザイヤー審査員、社会福祉HERO’S TOKYO 最終審査員、Jリーグ「シャレン!」審査委員など。

執筆記事一覧
キーワード: #脱炭素

お気に入り登録するにはログインが必要です

ログインすると「マイページ」機能がご利用できます。気になった記事を「お気に入り」登録できます。