記事のポイント
- 日本財団は受刑者向けに日本初となるメタバース空間での企業説明会を開いた
- 当日はメタバース空間上に13社の企業がブースを出展した
- 矯正施設にいる受刑者らは施設の中から個別で各企業の担当者に質問した
日本財団は2月2日、受刑者・少年院在院者向けに日本初となるメタバース空間での企業説明会を開いた。当日はメタバース空間上に13社の企業がブースを出展し、矯正施設にいる受刑者らは施設の中から個別で各企業の担当者に質問した。再犯者の7割が無職であり、日本財団は社会復帰を支援している。(オルタナ副編集長=池田 真隆)

日本財団は、受刑者・少年院在院者の社会復帰を支援する「職親プロジェクト」を推進してきた。企業が「親」のように受刑者らに再チャレンジできる環境を用意することで、受刑者らの再犯防止を目指すものだ。
このほど、同プロジェクトの一環として、法務省と連携し、受刑者らに対する就労支援策として、日本初となるメタバース空間での企業説明会を開いた。
この説明会には、飲食業界や建設業界から13社が参加した。飲食業からは千房、建設業からは、カンサイ建装工業、栄進、有限会社佐久間土建興業、サムライ工業、白石工業、鳶新輝総業、プリズム、降旗興業が参加した。
その他、介護のナチュラルスタンス、清掃業の一般社団法人ヒューマンハーバーそんとく塾、製造業の藤巻製作所、人材派遣のワライフが参加した。札幌刑務支所、帯広刑務所、月形刑務所、茨城農芸学院、多摩少年院、新潟少年学院から20人弱の受刑者らが各企業の説明を受けた。
当日はメタバース空間上に各企業がブースを出展し、受刑者らは収容されている矯正施設からそれぞれメタバース空間に入室した。
受刑者らは自由に企業ブースに出入りでき、個別に質疑応答ができる。会社案内や会社紹介の動画も閲覧可能だ。
受刑者らの出所後の就労については、これまで企業が各矯正施設を訪問する必要があり、企業側の負担が少なくなかった。メタバース空間で就労支援を実施することで、これまでのように各矯正施設に個別に訪問する必要がなくなり、効率よく採用活動を行えるようになった。
日本の検挙人員は2004年の389,027件から減少し続けているが、再犯者率(1年間の逮捕者のうち、犯罪件数が2回目以上の者)が1996年の27.7%から48.7%(2016年)まで上がった。罪を犯した人のうち、約2人に1人が再犯をしている割合で、再犯者の70%が無職だ。
職親プロジェクトを推進する日本財団公益事業部の福田英夫部長は、「受刑者と企業を仮想空間を通してつなぎ、雇用が進まない受刑者の就労促進を狙う。今回は試験的な実施だが、 2024年度から本格的に導入を行いたい」と話した。