記事のポイント
- 「ネスカフェ ゴールドブレンド」の詰め替えパックが一新した
- デザインコンセプトは、詰め替え作業を「楽しむ」
- エコな取り組みに、「楽しく、気軽に」参加できる仕様にした
ネスレ日本は3月6日、「ネスカフェ ゴールドブレンド」の詰め替えパックを刷新することを発表した。2008年の発売以降、プラスチック使用量を減らし、環境配慮型のパッケージへの改良を重ねてきた。今回、詰め替え作業を「楽しむ」をコンセプトに刷新した。(オルタナ副編集長=池田 真隆)

新しいパッケージの特徴は、自分好みの容器(口径 6cm 以上の密閉容器を推奨)に詰め替えができる点にある。従来の詰め替えパックは、ネスカフェ専用の瓶だけに対応していた。
パッケージを容器の上にかざし、指で押すと、封が割れてコーヒー豆が補充できる。押した時に「パキッ」という音がなる仕様にこだわった。
同社の飲料事業本部レギュラーソリュブルコーヒー&システム・ギフトボックスビジネス部の中西弘明氏は、「詰め替えを単なる作業ではなく、楽しく、気軽に、気持ちいい体験を目指した」と話す。

■ネスレの神髄は「イノベーション」にあり
ネスレは世界最大の食品メーカーだが、その真髄は、社会課題を起点にビジネスを考えてきたことだ。アンリ・ネスレが150年前に創業した時、ヨーロッパでは栄養不足で乳児の死亡率が高かった。そこで、乳児用乳製品を開発・販売したのが最初の製品だった。
ネスレのメインブランドである「ネスカフェ」は1938年に誕生した。世界最大のコーヒーブランドだが、このブランドも社会課題の解決を目指し立ち上げた。
当時、ブラジルでコーヒー豊作の年に価格が暴落した。農家が大量にコーヒーを捨てており、ブラジル政府から、余ったコーヒー豆を使って、保存できる形にできないかと相談を持ち掛けられた。こうして生まれたのが、ネスカフェだ。
2012年から始めたネスカフェのコーヒーマシンを提供する「ネスカフェ アンバサダー」も、社会課題起点で考えた。
目を付けた課題は、「孤独・孤立」だ。高齢者のコミュニティー支援活動を行い、その一環で、コーヒーマシンを無料で提供した。
家族と離れて暮らす高齢者が、そのマシンでいつコーヒーを飲んだか、遠隔で分かるようにした。コーヒーを通じて、「コミュニケーション」を生んだ。
■コーヒー生産の危機「2050年問題」
今、ネスカフェが取り組む社会課題は、「コーヒーの2050年問題」だ。コーヒー栽培に適した土地は、北緯25~南緯25度に限られている。気候変動の影響で、コーヒー栽培に適した土地が最大で50%減ることが予測されている。さらに、コーヒー農家の約8割が、貧困状態にもある。
人口が増え、コーヒーに依存する人が増えていくと、2050年にはコーヒーが飲めなくなる日が訪れるかもしれない。ネスカフェでは、この問題に対応するため、「ネスカフェ プラン2030」を掲げた。
2025年までにグローバルで、100%責任ある調達に切り替え、再生農業を通じたコーヒー豆を20%調達する。30年までに、この割合を50%に高め、温室効果ガス排出量の半減を目指した。この目標を達成するために、10億スイスフランを投じる。
この一環で、ネスカフェは2023年秋から、ブランドコンセプトを「Make your world」に変えた。調達から消費、廃棄までの各工程でサステナビリティを重視した。
すでに、ネスカフェで使うコーヒー豆は100%責任ある調達基準を満たしており、製品パッケージのプラスチック使用量の削減にも努めてきた。廃棄したパッケージで、新たな製品を開発するアップサイクルにも取り組む。
■ネスカフェをマイバック、マイボトルの次のサステナアクションに
ネスカフェはブランドとしてあるべき姿を、「そのコーヒーは、あなたをちょっとだけヒーローにする」を掲げる。
中西氏はその意味をこう説明した。「若い世代から選んでもらうためには、機能面だけでなく、情緒的な結びつきが重要だ。サステナビリティの社会をともに目指すことで、その結びつきが生まれる」。
「ネスカフェを飲むことをマイバック、マイボトルの次の具体的なサステナアクションにしたい」と意気込む。