ESGは「踊り場」に、「インパクト」が問われる

2006 年に発足した国連責任投資原則(PRI)によって、ESG 投資残高は急激に伸びてきた。金井司・三井住友信託銀行・フェロー役員は「市場拡大のペースが異常だった」と指摘する。ESG を巡る投資の動きは「踊り場を迎えた」とし、「インパクト」が次の潮流だと話す。(オルタナ副編集長=池田 真隆)

金井 司(かない・つかさ)・三井住友信託銀行株式会社サステナビリティ推進部フェロー役員。グループのサステナビリティ業務を牽引してきた。2018 年4 月からフェロー役員。2003 年の企業年金初のESG (SRI)ファンドの開発をはじめ、環境不動産業務の立ち上げ、ポジティブ・インパクト・ファイナンスの開発、テクノロジー・ベースド・ファイナンスチームの組成などを手掛ける。政府、自治体の各種委員。

第二次トランプ政権になるとESGを巡る政策や投資はどうなるのか。現象面だけでとらえるべきではなく、20世紀初頭から始まった社会的責任投資(SRI)の源流から見るべきだ。

SRIはギャンブルやたばこなどを取り扱う産業に投資しない、「ネガティブスクリーニング」から始まった。1960-70年代には、ベトナム反戦や反アパルトヘイト運動と連動する動きも見られた。
 
2006年のPRIがこの流れを「ESG投資」に収斂(しゅうれん)させた。ただ、この100年の間に何度もアップダウンはあり、今の反ESGの動きもこうした「揺らぎ」の一つだ。

20世紀型の社会システムの限界は明らかだ。お金の流れを変えるESGの必然性は一層高まっている。ESG投資の受託者責任を問う問題が蒸し返されて、「うんざり」する。米国において基本的な論点は90年代に整理されており、変わっていない。

「パフォーマンスは犠牲にしない、ピリオド」だ。但し、PRIが発足してから約20年のESG投資市場の拡大ペースは異常だった。資産運用のプロトコルである「現代投資理論」との整合性を度外視した動きも見られ、正直、違和感があった。

PRIも「インパクト」打ち出す

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M.Ikeda

池田 真隆 (オルタナ輪番編集長)

株式会社オルタナ取締役、オルタナ輪番編集長 1989年東京都生まれ。立教大学文学部卒業。 環境省「中小企業の環境経営のあり方検討会」委員、農林水産省「2027年国際園芸博覧会政府出展検討会」委員、「エコアクション21」オブザイヤー審査員、社会福祉HERO’S TOKYO 最終審査員、Jリーグ「シャレン!」審査委員など。

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キーワード: #ESG#オルタナ77号

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