2006 年に発足した国連責任投資原則(PRI)によって、ESG 投資残高は急激に伸びてきた。金井司・三井住友信託銀行・フェロー役員は「市場拡大のペースが異常だった」と指摘する。ESG を巡る投資の動きは「踊り場を迎えた」とし、「インパクト」が次の潮流だと話す。(オルタナ副編集長=池田 真隆)

第二次トランプ政権になるとESGを巡る政策や投資はどうなるのか。現象面だけでとらえるべきではなく、20世紀初頭から始まった社会的責任投資(SRI)の源流から見るべきだ。
SRIはギャンブルやたばこなどを取り扱う産業に投資しない、「ネガティブスクリーニング」から始まった。1960-70年代には、ベトナム反戦や反アパルトヘイト運動と連動する動きも見られた。
2006年のPRIがこの流れを「ESG投資」に収斂(しゅうれん)させた。ただ、この100年の間に何度もアップダウンはあり、今の反ESGの動きもこうした「揺らぎ」の一つだ。
20世紀型の社会システムの限界は明らかだ。お金の流れを変えるESGの必然性は一層高まっている。ESG投資の受託者責任を問う問題が蒸し返されて、「うんざり」する。米国において基本的な論点は90年代に整理されており、変わっていない。
「パフォーマンスは犠牲にしない、ピリオド」だ。但し、PRIが発足してから約20年のESG投資市場の拡大ペースは異常だった。資産運用のプロトコルである「現代投資理論」との整合性を度外視した動きも見られ、正直、違和感があった。
■PRIも「インパクト」打ち出す