インドの農村から世界に広がる循環トートバッグ

記事のポイント


  1. インドの農村女性たちが伝統的技法で作る「トートバッグ」が世界に
  2. 有名書店や高級ホテルなどから発注を受け、特注品を手作りで仕立てる
  3. サプライチェーンの透明性を重視し、綿はオーガニックコットン100%だ

インドの農村女性たちが伝統的な技法で作る「トートバッグ」が世界に広がる。英国やフランスの高級ホテルや有名書店などからも発注を受け、特注品を手作りで仕立てる。サプライチェーンの透明性を重視したモノづくりにこだわり、綿はオーガニックコットン100%だ。(オルタナ副編集長=池田 真隆)

インドの農村部の女性に伝統技法を教え、経済的な自立支援につなげる

高い経済成長率が見込まれるインドの南部「ガンバリ」と「マイソール」に大きな縫製工場がある。その工場が使用するエネルギーはすべて太陽光発電で賄われ、水も雨水を利用する。工場内に設けた浄水施設によって、水の循環システムも構築した。

この工場を運営するのは、re-wrap(リラップ)という名称の社会的企業だ。インドの農村地域の女性を縫製職人として雇用する。機械化が進む中でも、手作りの伝統的技法を教える。工場内には日夜、数百人が働き、その技法でトートバックやポーチなどを作っている。

この女性たちにバッグの製作を依頼するクライアントには世界的に有名な企業も名を連ねる。英国・ロンドンにある、「世界で最も美しい本屋」と称された「ドーント・ブックス」、米国の小説家ヘミングウェイが通ったことでも知られる、フランスのセーヌ川沿いにある書店「シェイクスピア・アンド・カンパニー」などがそうだ。

さらに、ロンドンにある5つ星ホテル「クラリッジズ」や「コンノート」なども自社オリジナルのトートバッグなどを依頼する。

クライアントは自社オリジナルのトートバッグを発注する

日本の顧客としては、ラッシュ・コスメティックス・グローバルとニールズ・ヤード・レメディーズなどがある。

これらの企業がリラップを選ぶ理由は、職人一人ひとりの技術力と透明性を重視したサプライチェーンマネジメントにあるという。

全ての工程を追跡可能に

リラップは「シード・トゥ・ショップ (種蒔きからショップまで)」というコンセプトを掲げ、モノづくりに関わる全行程の透明性を高めた。すべての工程の追跡を可能にし、工場で働く縫製職人だけでなく、綿花の生産農家や販売店のスタッフにいたるまで製品に関わる人の人権を守る。

オーガニックコットンにこだわり、使用する綿花はすべて、環境再生型農業を実践する生産農家から仕入れたGOTS認証のオーガニックコットンだ。

リラップを創業したのは、インドで家具店を経営していたジャンジリ・トリヴェディ氏。きっかけは2003年に起きた大地震だ。マグニチュード7の地震がカッチ地方を襲った。この大地震によって、2万人が死亡し、崩壊した村は8千に及んだ。

トリヴェディ氏は、震災後カッチ地方を訪れた。その時に同地で懸命に復興に向けて働く才能豊かな縫製職人に感化され、この伝統技術を生かせないかと考えた。トリヴェディ氏は日本の風呂敷にヒントを得て、再利用可能なギフト用包装に目を付けた。

23年10月には厳しい基準で知られる「Bコープ認証」を取得した。トリヴェディ氏は、「リラップでは、人々の生活や地域社会に良い変革をもたらすことを目指している」とオルタナ編集部の取材に答えた。

M.Ikeda

池田 真隆 (オルタナ輪番編集長)

株式会社オルタナ取締役、オルタナ輪番編集長 1989年東京都生まれ。立教大学文学部卒業。 環境省「中小企業の環境経営のあり方検討会」委員、農林水産省「2027年国際園芸博覧会政府出展検討会」委員、「エコアクション21」オブザイヤー審査員、社会福祉HERO’S TOKYO 最終審査員、Jリーグ「シャレン!」審査委員など。

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