オルタナ総研統合報告書レビュー(39): クレディセゾンG

記事のポイント


  1. クレディセゾングループは、金融をコアとしたグローバルな総合生活サービスグループを目指す
  2. 「CSDX VISION」を掲げビジネスを変革・転換する
  3. 内製化によりコストダウンを図る

クレディセゾングループは2030年に目指す姿を、「GLOBAL NEO FINANCE COMPANY ~金融をコアとしたグローバルな総合生活サービスグループ~」としました。その為に、デジタル技術でビジネスを変革・転換する「CSDX VISION」を掲げ、全社員のDX化に依り、デジタル時代を先導する企業を目指しています。内製化に依るシステム構築コスト半減化、業務プロセスデジタル化に依る年間20万時間以上の削減効果も見込んでいます。(オルタナ総研フェロー=室井 孝之)

同グループのDX化は、内製開発組織であるテクノロジーセンターの立ち上げから始まっています。 

小野和俊CDOは、統合報告書2024「CSDX戦略」担当役員メッセージで、2023年度の成果、振り返りを次のように総括しています。 

1.2023年からのフェーズ3では、 CSDX推進部だけでなく、全社員によるDXを目指しており、生成AIやノーコード・ローコードツールを活用し、社員全員の生産性を向上させることが重要なテーマとなっている。 

2.外部に委託する場合と比べてシステム構築コストが半分以下に抑えられるため、各事業の利益率向上に寄与した。 

規模が拡大しても品質や堅牢性とスピードの両立が維持できている。 

3.業務プロセスの完全デジタル化の実現に向けて、デジタル部門が中心となり、業務プロセスの見直しや改善を推進しており、ビジネス部門から”あるべき理想の姿”をヒアリングし、その実現に向けてデータ処理の自動化や、ワークフローの構築等に取り組んだ。300件を超える案件がエントリーされており、これらを自動化することができれば、年間20万時間以上の削減効果があると見込んでいる。 
 

4.ノーコード・ローコードツールを活用した業務効率向上を目指し、社員向けのリスキリング提供を拡大している。2023年度から開始した内製の研修プログラム「シチズンデータサイエンティストコース」の一期生が3月で卒業を迎えた。コールセンターや債権管理部門など、幅広い領域から集まった参加者が、自部署の課題を解決するためのダッシュボードを作成し、役員に対してプレゼンテーションを行うイベントが開催された。 

5.2023年から注力している生成AIの活用において、全社員が利用可能な内製開発のサービスとして、社内専用ChatGPT、社内問い合わせSlackチャットボット、議事録作成システムの3つを提供している。 

生成AIの活用は、企業の成長と競争力強化において極めて重要な要素となっている。今後はEX向上にとどまらずCX向上においても生成AI技術を活用し、より良いサービスと価値を提供していきたい。 

統合報告書2024でも、生成AIにはハルシネーション(誤った情報の生成)対策として、AIの回答を担当部門が確認してから質問者に回答を返すHuman-in-the-Loop(システムの一部の判断や制御にあえて人間を介在させること)を取り入れていると記載されていますが、次回は生成AIのリスクと更なる対応策を開示されたらいかがでしょうか。 

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室井 孝之 (オルタナ総研フェロー)

42年勤務したアミノ酸・食品メーカーでは、CSR・人事・労務・総務・監査・物流・広報・法人運営などに従事。CSRでは、組織浸透、DJSIなどのESG投資指標や東北復興応援を担当した。2014年、日本食品業界初のダウ・ジョーンズ・ワールド・インデックス選定時にはプロジェクト・リーダーを務めた。2017年12月から現職。オルタナ総研では、サステナビリティ全般のコンサルティングを担当。オルタナ・オンラインへの提稿にも努めている。執筆記事一覧

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キーワード: #サステナビリティ

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