記事のポイント
- 年金積立金管理運用独立法人(GPIF)は25年度からの5カ年計画を発表した
- GPIFは約260兆円の運用資産規模を有する、世界でも最大規模の機関投資家だ
- 長期収益確保の観点からサステナ投資重視の姿勢を示し、反ESGから一線を画した
日本の年金積立金管理運用独立法人(GPIF)は3月31日、2025年度から2029年度までの5カ年中期計画を発表した。GPIFは、約260兆円の運用資産規模を有し、世界でも最大規模の機関投資家として、その動向が注目される。GPIFは今回、長期的な投資収益確保の観点から、「サステナビリティ投資方針」を明確に掲げた。財務的要素に加え、環境・社会・ガバナンス(ESG)の非財務要素を重視する姿勢を打ち出し、米国を中心に広がる反ESGの動きから一線を画した。(オルタナ輪番編集長=北村佳代子)

GPIFは、今回新たに掲げた「サステナビリティ投資方針」の中で、ESG(環境・社会・企業統治)や社会・環境的効果(インパクト)を考慮した投資を戦略の根幹に置くことを明確に打ち出した。
GPIFは、巨額の運用資産を保有し、幅広い資産や証券に分散投資を行う長期投資家だ。また、将来の現役世代の保険料負担を軽減するために使われる年金積立金を運用することから、「世代をまたぐ投資家」としての特性も併せ持つ。
こうした特性を持つGPIFが、長期にわたって投資収益を追求するにあたって、資本市場は「環境問題や社会問題などのサステナビリティに関するリスクから逃れられない」と、「サステナビリティ投資方針」の中で断言した。
同時に、事業活動を通じて環境・社会問題にポジティブなインパクトを与えられる企業やプロジェクトは、課題解決を持続的な成長の糧にできる可能性がある、との見方も同方針の中で示した。
ESGに関しては、米国を中心に広がりつつあった反ESGの動きが、トランプ政権下でその力をさらに強めており、これまでESG投資を積極推進してきたブラックロックなどの資産運用会社は、米共和党議員などから訴訟や取引禁止といった措置を受けている。
そのような中で、GPIFは今後の投資ポートフォリオ方針とともにサステナビリティ投資重視の姿勢を打ち出し、反ESGの動きから一線を画した形だ。