記事のポイント
- 英政府は先月、2030年までに農薬を10%削減する方針を打ち出した
- 農薬使用を削減することで、ミツバチなどの花粉媒介生物の保護を強化する
- 英政府は新たに農薬負荷指標を設け、進捗状況を把握していく
英国政府は3月21日、国家行動計画(NAP)を発表し、2030年までに農薬を10%(2018年比)削減する方針を示した。農薬使用を削減することで、農薬によるミツバチなどの花粉媒介生物への悪影響を減らしていく。進捗管理のために新たな農薬負荷指標を設けるほか、農薬を使用せずに農地での害虫を減らす総合的な害虫管理も奨励する。(オルタナ輪番編集長=北村佳代子)

国連の食糧農業機関(FAO)によると、農業用殺虫剤の使用量は1990年以降、世界全体で増加を続けており、2020年には1990年比で約90%増加した。そのような中、2022年12月の国連生物多様性条約第15回締約国会議(COP15)では、2030年までに「農薬および高有害性化学物質による全体的なリスクを少なくとも半減させる」という世界的な目標が設定されている。
英国は、2020年までの30年間で、農薬の使用量を約60%減少させてきた。今回、英国政府は、同政府として初となる農薬削減目標を打ち出した。
エマ・ハーディ環境・食糧・農村地域相は、「英国政府は環境保護への取り組みの一環として、生産性と経済成長を支援しながら、自然界を回復させる。英国ではミツバチを殺す農薬の使用を禁止し、さらに今回、サステナブルな慣行を採用する農家や生産者を支援する方針を打ち出した」と意義を強調した。
■ミツバチの保護にコミットする
今回の方針は、花粉媒介生物の保護を英国政府として強くコミットするものだ。農薬を適切に使用しなかった場合の罰則も計画には含まれている。
ミツバチの個体数に有害な影響を与えることで知られるネオニコチノイド系農薬についても、日本では規制が緩いが、英国政府は2024年12月に、これまで例外的に認めていた一部のネオニコ系農薬も含めて全面禁止とする方針に戻した。
ネオニコ系農薬は、欧州では早くから使用禁止となっているほか、米国でも承認を取り消すなど、世界的には規制強化の方向にある。
■新たな農薬負荷指標は毒性も考慮する
■農薬に代わる代替案も推奨する
■都市部での農薬使用方針は先送りに