記事のポイント
- RE100は、アンモニアと石炭を混焼した発電の使用を認めない方針を示した
- RE100は再エネの普及を目指すイニシアティブで、世界約450社が加盟する
- 「日本政府は石炭混焼発電を推進する政策を変える必要がある」と専門家
再生可能エネルギーの普及を推進する「RE100」は、加盟企業がアンモニアと石炭を混焼して発電した電力を使用することを認めない方針を示した。RE100とは、アップルやネスレ、イケアなど世界の主要企業約450社が加盟する国際イニシアティブだ。専門家は、「日本政府は、アンモニアと石炭の混焼発電を推進する政策を変える必要がある」と指摘した。(オルタナ編集部=松田 大輔)

「RE100」は、国際環境NGOの英クライメート・グループがCDPとのパートナーシップのもとに発足した国際イニシアティブだ。企業が使用する電力を再生可能エネルギー100%で調達することを目指し、2014年に活動を始めた。
アップルやネスレ、イケアなど世界の約450社がRE100に加盟する。他にもグーグルやナイキ、サムスン電子といった大企業が名を連ねており、その影響力は大きい。加盟企業の売上合計は6兆6000億米ドル(約950兆円)を超えるとされ、日本からはリコーや積水ハウス、アスクルなど約90社が参画する。
公益財団法人自然エネルギー財団(東京・港)の石田雅也研究局長は、「例えばアップルの取引企業だけでも膨大な数に及ぶ。そうしたサプライチェーン上の企業もRE100に準拠した電力調達を求められるため、加盟約450社以上の無数の組織が、RE100の要件に準じて電力を調達する」と説明する。
■アンモニアと石炭の「混焼」認めず
RE100は加盟企業が調達する再生可能エネルギーの電力に関して、太陽光や風力といった再エネの種類や調達方法に関する要件を規定している。2年ごとに見直しており、25年3月の改定で強調したのが「化石燃料の排除」だ。
とりわけ、石炭と混焼して発電した電力の使用を認めない方針を示した。アンモニアと石炭の混焼による発電をはじめ、木材などのバイオマス素材と石炭の混焼などが対象だ。26年1月に企業が使用する電力から適用する。水素と天然ガスの混焼など、石炭以外の混焼は今後の見直しで検討する。
RE100は、世界の送配電網を40年までにカーボンフリーに移行することを目標に掲げる。再生可能エネルギーの普及推進とともに、石炭をはじめとする化石燃料の排除を進めることで、目標の達成を目指す。
石炭との混焼を認めると、結果的に石炭火力発電所の長期運用につながる恐れがある。石炭火力発電は多くの温室効果ガス(GHG)を排出するため、世界的には廃止の流れが続いている。24年に英国、25年4月にはフィンランドが最後の石炭火力発電所を閉鎖した。
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石田研究局長は、「自然エネルギーの利用が活発化する中、石炭混焼は迅速なエネルギー転換を阻害する。今回のRE100の改定は、市場や政策決定者に対して、エネルギー転換を急ぐ必要があるという明確なシグナルを送るものだ」と指摘した。
日本政府はアンモニアと石炭の混焼を、エネルギーの移行過程に必要だとして推進する。しかし、RE100が石炭混焼に明確な「ノー」を示したことで、「石炭混焼を進める日本は、世界でガラパゴス化する恐れがある。日本政府は、アンモニアと石炭の混焼発電を推進する政策を変える必要がある」(石田研究局長)
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例えばRE100の要件を100%クリアできなくても加盟企業として残ることはできるが、多くの企業が石炭混焼で発電した電力の使用に消極的になることが予想される。改定ではこのほか、証書の償却確認の徹底やコーポレートPPA(電力購入契約)での15年ルールの緩和を実施した。
・石炭混焼に関するRE100のQ&Aはこちら(英語)
・技術要件改定に関する石田研究局長のコラムはこちら
・RE100に加盟する日本企業の一覧はこちら