朝日新聞社は12月16日、米マイクロソフト創業者でビル&メリンダ・ゲイツ財団共同議長のビル・ゲイツ氏を招き、朝日新聞未来メディア塾スペシャル「ビル・ゲイツと語る日本、未来」を開催した。ゲイツ氏は、「すべての命は平等だ。生きているうちに感染症を撲滅したい」と訴えた。(オルタナ副編集長=吉田広子)

ビル&メリンダ・ゲイツ財団は2000年、ゲイツ氏と妻のメリンダ氏によって創設された世界最大の慈善基金団体だ。2014年の年間寄付総額は39億ドル(約4750億円)に上り、これまでに新薬の開発や予防といったマラリア撲滅のために20億ドル(約2400億円)を助成している。
セミナーの第一部では、ゲイツ氏と楽天の三木谷浩史会長兼社長が対談。ゲイツ氏は、「ポリオは昔から世界にあるし、マラリアによって年間約50万人が死亡している。日本は災害があれば援助を惜しまないが、こうした日々支援を必要としている人たちにも寄付をしてほしい」と訴えた。
「マラリアが発生しやすい貧しい国には薬もお金もない。一方、先進国にマラリアはなく、だからこそ、資金が注がれない。世界は不平等だが、命の価値は平等だ。マラリアの死者をゼロにするという目標を持って行動するのは、ビジネスと共通する。ただし、利益目的ではなく、社会的な問題の解決を目指している。それは楽しいことだ」(ゲイツ氏)
さらに、「私は40代になって初めてフィランソロピーに目覚めたが、フェイスブック創業者のザッカ―バーグは30代から取り組んでいる。これは良い例だ」と続けた。
■ゲイツ氏のミッションとは
第二部のセッションでは、会場やソーシャルメディア上で集まった質問にゲイツ氏が答えていった。
来場していた乙武洋匡氏は「手と足がなく生まれたが、いまは妻も子どももいて、自分の人生に満足している。私は誰もが平等に機会を得られるようにしたい。ゲイツ氏のミッションは何か」と質問した。
ゲイツ氏は、「乙武さんと同じように、妻も子どももいて幸せだ。幸いなことにゲイツ財団にはリソースがあるので、高い目標を設定している。私は生きているうちに、ポリオやマラリア、HIVといった感染症を撲滅したい。マイクロソフトは、一人ひとりがPCを持ってほしいという思いで立ち上げた。いまはそれがほぼ現実になっている。同じように感染症の撲滅も実現できるはず」と話した。
■「気候変動は大きなチャレンジ」
「20年後の世界はどうなっているか」の質問には、「世界の医療・保健は良くなっているのではないか。HIVや結核は撲滅しているかもしれない。また、20年後にはいまより安くて、CO2を排出しない新しいエネルギーが開発されているだろう。気候変動が起きていないことを期待している」と答えた。
関連する地球の持続可能性についての質問には、「将来的に食料はいきわたり、保健も整っていると思う。気候変動は大きなチャレンジだ。すでに世界の子どもの数のピークは超えた。では、なぜ人口は増えているのか。人口増は子どもではなく、高齢化による増加だ。貧しい地域は子どもが多いが、医療が良くなり、乳幼児の死亡率が下がると、子どもの数は減っていく。人口爆発はないのではないか」と話した。
復興支援のための募金活動などを行っている福島の中学生には、「寄付に不信感を持っている人はいる。寄付しても成果が感じられないからだ。写真などを利用したり、クリエーティブな人を集めて、支援者に報告するのはどうか」とアドバイスした。