
過激? 環境オタク? 名前は知っているけど何をやっているのか分からない。グリーンピースで働いていると話すと、このようなイメージを抱く方がいるのも現実です。いままで何度もこのような状況を経験してきました。そこで今回は、実際に働いているスタッフを紹介したいと思います。
今回紹介するのは、SNSなどのツールをフル活動し、クリエイティブの力で環境問題を解決する部署「パブリックエンゲージメント」でチームリーダーをしている石井祐介。子どもと一緒に、自宅でゴーヤ、ネギ、水菜など無農薬で野菜を育てている2児のパパでもあります。
彼が生まれたのは自然に囲まれた山形県。大学のときに上京し、卒業後はずっと一般企業で働いており、環境問題などに関して特別な思いは持っていなかったと話します。企業では営業を担当し、モノづくりの現場に携わるようになってから、自身も制作する側になり、ディレクターをしていました。(国際環境NGOグリーンピース・ジャパン広報=成澤薫)
■すべての価値観が変わった3.11

僕(石井)は震災当時、企業に勤めていました。突然の大きな揺れに、初めて机の下に隠れたのですが、小さい頃の避難訓練で見た光景がそこには広がっていました。みなが経験したことのない出来事に不安と恐怖を抱き、ただ事ではないと感じました。
そして僕も帰宅難民になり、会社のあった中目黒から自宅のある神奈川まで歩いて帰ろうとしたのですが、距離感覚がまったくわからず、バスも電車も全ての交通機関がマヒして、携帯電話でラジオを聴きながら、ただ歩いていました。
8時間くらい歩いてもまだ川崎市で、でもその時点で夜の12時。とりあえずここで一旦休憩をとろうと、周りを見るとたくさんの人が横たわっていたました。映画で見るような異様な光景で、普段の見慣れている公共機関や、商業施設が、強い地震で一瞬にして全てが変わりました。
今まではビジネスマンとして、利益を上げることを追求してきましたが、僕たち人間は自然の中で生かされている存在なんだと気づいた時でした。この一連の出来事を通じて、全ての価値観が崩れ、僕の中で何かが変わりはじめました。
それまでは経済のことが頭の中を占めていたのですが、震災後は次の世代、子どもの将来のことを考えるようになりました。子どもには自信を持って、何をしているのかを言える父親になりたいと思い、環境問題などを調べるようになりました。そんな時、グリーンピースと出会いました。
実はいままでグリーンピースやNGOについてそこまで知識はなく、環境活動なんて意識したこともありませんでした。でも、実際グリーンピースの事務所を訪れ、話を聞いているうちに、こういう働き方もありなのかもしれないと感じてきました。
質問や疑問にも、全てきちんと丁寧に答えてくれ、幾多のトラブルにも乗り越えた空気感に直接触れることができて、ますます面白そうだなと、一緒に働いてみたいなと思いました。
このように、僕はグリーンピースのことはあまり知らずに入ったんですよ。
■クリエイティブの力で環境問題を解決する
僕にとって仕事としてのグリーンピースの魅力は、自分自身に嘘をつかなくていいところです。
企業だと自社の商品を心から気に入っていなくても、売らなくてはいけない。そして利益を上げていかなくてはならない。でも、グリーンピースの場合は、相手が友達でも家族でも、堂々と自分の仕事に誇りをもって伝えられる。これが一番大きいと思います。
グリーンピースは環境問題に対して社会にインパクトのある行動を起こすことをアイデンティティとしています。僕が働いている部門「パブリックエンゲージメント」では、一般の方が参加できるような行動を呼びかけたり、ソーシャルメディアで発信することで、理解を深めてもらう、外部へのコミュニケーションの窓口役をしています。
■次のターニングポイントは東京オリンピック
いま僕が携わっているプロジェクト「Lab(仮)」では、2020年の東京オリンピックを見据えています。これまでのNGOの役割や活動の仕方を一新するような形で、オリンピックに向けての盛り上がりをつくっていきたいんです。
ロンドンが、サステナブルオリンピックと言われたように、東京オリンピックでも、ユニークなものを日本から世界に伝えたいですね。日本人のこういうところが良いよねって思われる、ソーシャルデザインにチャレンジしたい。
このプロジェクトではNGOを、企業、政府省庁、自治体、高校・大学などともっと連携できないかなと考えています。NGOの役割、立ち位置を変えたい。いままでのNGOの交渉の仕方は一方通行なコミュニケーションが多く見られたので、対話先である企業や政府は突然攻撃されているかのように身構えてしまうところがあったはずです。
今後益々各セクターが連携していかなければならないと誰もが感じているはずですので、今の時代に合った別のアプローチの方法を見つける必要があると考えています。
世の中はどんどん複雑化してきていますので、白か黒かのコミュニケーションだけではなく、相手の事情も理解した対話が、グリーンピースも含むNGO側にはこれからもっと必要になってくると思います。
■これからのグリーンピース

正直、日本と海外ではグリーンピースの認知度や知名度は全然違います。イベントでブース出展をしていて、海外の方が立ち寄ってくれると毎回「Thank you for doing this」と言ってくださるのが嬉しいです。同時に、日本人と海外の方々との環境配慮に対する理解度の大きなギャップに、まだまだ国内でのがんばりが足りていないと痛感します。
日本での、グリーンピースに対しての認知度と言うよりも、環境意識を上げていくにはどうすれば良いのだろうと日々思っています。もっとグリーンピースはこうすればいいとか、NGOはもっとこうであればいいとか、叱咤激励、ご批判など、どんな形でもいいので私たちに教えてください。
ご連絡はこちらまで!
supporter.jp(a)greenpeace.org
※(a)は@に変えて送信下さい