全国に約430店舗の「無添くら寿司」を展開するくら寿司は、2018年5月に開始した「さかな100%プロジェクト」で、非可食部をすべて魚粉にして、調理時の廃棄ゼロを実現している。また、手付かずで廃棄される寿司の廃棄量についても、ITを活用して従来の約5分の1に抑えた。管理の鍵は、ドーム状の透明ふた「鮮度くん」に付けたICタグだ。(海洋ジャーナリスト/編集委員=瀬戸内千代)

それまでも廃棄分は畜産用飼料に活用していたが、ICタグの情報を活用して、曜日や時間帯、来客数や滞在時間・消費量予想などのビッグデータを分析。AIで回す皿の数を調節する提供オペレーションで、約15%だった廃棄率は約3%に減った。
調理時には、寿司ネタにならない部位をすり身にして、ねり天やコロッケなどに加工。骨やアラは魚粉にして養殖餌や農業用肥料に使う。
養殖餌には、宇和島プロジェクト(愛媛県宇和島市)で廃棄される柑橘類の皮やオイルを入れ、育った「循環フィッシュ」を、フルーティーフィッシュとして断続的ながら通年提供している。直近では2019年9月5日まで「みかんぶり」を、9月4日から19日まで「みかんサーモン」を販売する(数量限定)。
循環フィッシュの事業は、第6回環境省グッドライフアワードのサステナブル・ビジネス賞の受賞当時(2018年)は赤字だった。しかし一般の魚が高騰する今、従来価格で手に入る循環フィッシュの活用で、採算が取れつつあるという。

2019年3月には、魚の付加価値をより高めるため、骨の周囲の身などをパテに使った「KURA BURGERフィッシュ」を発売。同6月には、寿司ネタになるサイズの魚を増やすため、契約漁業者の定置網にかかった未成魚を1年ほど蓄養する「魚育(うおいく)プロジェクト」にも着手した。
同社の魚粉を肥料に使った米の収穫は、2019年秋で2回目。10月8日から、大阪府貝塚市の「くら天然魚市場」やネット通販で販売予定だ。
広報宣伝部の辻明宏氏は、「魚粉にするより、そもそもの無駄をなくすことが目的。魚の使い道を開拓して、環境にもお客様にも漁業者の収入にも良い取り組みを進めていきたい」と語った。