最近、電気の分野で「PPA」という言葉が知られるようになってきた。PPAはPower Purchase Agreement(電力購入契約)の略で、需要者と売電事業者が直接契約を結ぶことを指す。今なぜ、日本でPPAが広がっているのだろうか。(山口勉)

セブン&アイ・ホールディングスとNTTは3月31日、セブン&アイグループの店舗運営で使用する電力の100%再生可能エネルギー化を目指し、国内初のオフサイトPPAによる電力調達およびNTTグループが所有するグリーン発電所からの電力を2021年4月より順次、一部店舗に導入すると発表した。
両社が発表したオフサイトPPAは「オフサイト型コーポレートPPA」の略で、需要者が発電事業者から再生可能エネルギーの電力を長期に購入する契約のことを指す。「オフサイト」というのは遠隔地の発電設備から送配電網を介して需要者設備へ送電するモデルで国内では初の試みとなる。
これに対し「オンサイトPPA」という手法もあり、日本国内ではこちらが主流となっている。これは需要者施設の屋根や隣接地(オンサイト)に太陽光パネルなどの発電設備を設置し発電供給するものである。
今回の取り組みはセブン&アイグループのセブン-イレブン40店舗およびアリオ亀有の店舗運営に100%再生可能エネルギーを使用するもの。
NTTが、オフサイトPPAの仕組みで2つの太陽光発電所を設置し、送配電網を介して電力供給を行う。事業者が電力消費者である企業・自治体等専用の再生可能エネルギー発電所を遠隔地に設置し、送配電網を介してその電力を長期間供給するオフサイトPPAは、国内初の取り組みとなる。
またオフサイトPPAだけでは不足する部分を、NTTグループが所有するグリーン電力発電所を活用することで、店舗運営に使用する電力を100%再生可能エネルギー化する。
オフサイトPPAはオンサイトに比べより大規模な設備投資が必要になるなどの難しさがあるが、店舗規模の変動や移転等に柔軟に対応しながら長期間安定的なグリーン電力の調達が可能となる点で今後増えていくことが予想される。
オルタナ本誌64号でも「脱炭素はチャンス 40年には再エネ100%」と題しキリンの溝内良輔常務執行役員のインタビュー記事を掲載した。キリンは今年2月に全国9工場のうち4工場でPPAモデルによる太陽光発電を導入した。その中の名古屋工場では今年中に再エネ100%を実現するという。
今回の契約は期間が20年と長期にわたるもので、セブン&アイとしては再生可能エネルギーを長期にわたって安定的に調達できるメリットがある。一方、NTTにとっては世界から出遅れている日本の再生可能エネルギー分野で事業拡大をはかるビジネスチャンスと捉えている。
両社はグループの持つ資産を最大限に活用しつつ先進的で追加性のある再生可能エネルギーを推進することで、国内のCO2削減に貢献していく。