鎌倉投信(鎌倉市、鎌田恭幸社長)が3月末、スタートアップ(新興)企業への投資・育成を目的にした新たな投資組合を立ち上げた。これまで新興企業が投資を受ける場合、新規上場やM&A(企業の合併・買収)しか出口がなく、持続的な成長への絵が描きにくかった。時価総額の大きさだけを競い合う「ユニコーン」狙いにも一石を投じる。(オルタナ編集長・森 摂)
同社は、企業の社会的な取り組みを重視した、「いい会社」に投資するユニークな手法で知られる。これまでの公募投資信託「結い2101」では、主な投資先は上場企業だった。新しい投資組合は未上場新興企業を投資先にする。
新たな投資組合の名称は「創発の莟(つぼみ)1号投資事業有限責任組合」で、フューチャーベンチャーキャピタル(京都市、松本直人社長)と共同で立ち上げた。
同社によると、これまでのベンチャー投資においては①投資を受けた場合には新規上場やM&A(企業の合併・買収)しか資金回収の手段がなく、限られた成長モデルしか描けない②社会的な課題に取組み、社会的価値や存在価値を高めたいものの、それを評価・理解する投資家が限定的であるーーことが問題だった。
さらには③投資から3年~5年で成長するスタートアップに投資が集中し、ユニコーンを狙うことが目標とされること④IPOの前後をつなぐノウハウを持つVC(ベンチャーキャピタル)が不在であり、その結果として上場後の持続的成長に不安があるーーなどの課題があるという。
「創発の莟」は、投資のモノサシとして、社会変革をもたらすような「創発性」を重視する。ファンドの総額は2021年3月末現在で約13億円。2022年3月をメドに25億円に増やしていく。投資先の業種は問わない。
1社あたりの投資額は3千万円から2億円程度になる見込みだ。現在3-4社の審査を進めており、早ければ6月にも第1号を決定したいという。
鎌倉投信は2008年に創業した。2010年3月に公募投資信託「結い 2101」 の運用・販売を始めた。受益者(投資信託の買い手)の数は約2万1千人、投資信託の純資産残高は約490億円、投資先企業は約70社( 2021年3月末現在)になった。このうち非上場企業6社の社債が含まれる。
「創発の莟」は、鎌倉投信にとって、「結い2101」に続く二つ目の商品だ。「創発の莟」は一般公募はせず、フューチャーベンチャーキャピタル社と投資事業有限責任組合を共同で運営する形になる。

鎌倉投信の鎌田社長はオルタナの取材に対して「上場後も視野に入れた株の長期保有をしたいが、IPOだけを目的にする投資戦略は取らない」「投資家の方と一緒にお金を出すだけでなく、知恵も出せるよう、投資先をチームで育成・支援していきたい」と抱負を話した。
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同社の4月27日付けリリースの骨子は下記の通り。