今年の夏も土用の丑の日を中心に多くの飲食店やスーパーマーケットがウナギのかば焼きを販売している。一方で、ヨーロッパウナギやニホンウナギは絶滅危惧種であり、国内で流通するウナギの5~7割がIUU(違法・無報告・無規制)漁業由来と言われている。いま水産庁が検討中の「水産流通適正化法」の対象魚種にウナギが入れば、この状況を変えられる可能性が高い。(オルタナ編集委員=瀬戸内千代)

水産庁は、科学的な資源管理に基づく持続可能な漁業を目指し、2020年に漁業法を大幅に改正した。その一環として公布された水産流通適正化法では、適正な漁業を脅かすIUU漁業由来の水産物を市場から締め出すべく国内流通と輸入それぞれのトレーサビリティを強化する。詳細は年内に決まる予定で、5月から水産庁が有識者らと検討を重ねている。この検討会にはマルハニチロやイトーヨーカ堂も参加している。
IUU漁業は、違法(Illegal)・無報告(Unreported)・無規制(Unregulated)漁業の総称で、過剰漁獲によって有用種を絶滅に追いやり、不正な魚価で市場を乱すため、国際的に大きな問題となっている。監視が行き届かない洋上での奴隷労働を伴う事例もある。
高価な水産物はIUU漁業の標的とされやすいため、水産流通適正化法の対象魚種を定める客観的な指標の一つは単価である。検討会の資料によると、1kg当たりおおよそ、アワビは7,328円、ナマコは2,490円で、いずれも対象になることが想定されている。しかし、同170万7000円のシラスウナギ(ウナギの幼魚)については見通しが示されていない。
日本で消費されているウナギの99%は、種苗を天然のシラスウナギに依存する養殖である。日本はシラスウナギに加えて、成魚や加工品(かば焼き)も大量に輸入しており、消費するウナギの3分の1しか自国で賄えていない。
世界に生息するウナギ属16種のうち食用に適した種は軒並み数を減らし、かつては豊富にいたニホンウナギも、生息環境の開発や海洋環境の変化の影響もあり、IUCN(国際自然保護連合)指定の絶滅危惧種となっている。
ニホンウナギは東アジアに広く分布するため数カ国で協調して資源保護に取り組んでいるが、国内外で採捕されるシラスウナギの流通には抜け道が多く、日本で流通するウナギの過半数がいまだIUU漁業由来である。
そのため、複数の環境NGOや専門家が「ウナギを水産流通適正化法の対象魚種に含めることが不可欠」と指摘している。民間が結成し2017年から活動するIUU漁業対策フォーラムは、「ルールを守って正しく操業している日本の漁業者を守るために」ウナギはもちろん、最終的には日本に輸入する全魚種を対象とすることを求めており、7月21日に水産庁に対して提案書を提出した。