「2050年カーボンゼロ」を掲げる東京・世田谷区は、地方でつくられた再エネ電力の積極利用を推進している。2021年9月現在、5自治体にネットワークを広げた。人口は23区内最多で、鳥取県などより多い92万人が住む巨大自治体が、「脱炭素」に向けて地方自治体とスクラムを組んだ。(長濱 慎)

世田谷区は世界的な気候変動対策の潮流を受けて、2020年10月に「世田谷区気候非常事態宣言」を発表。2050年までにCO2排出量実質ゼロを表明した。
その実現に向けて存在感を高めているのが、地方自治体からの再エネ電力購入だ。
2016年の群馬県川場村(木質バイオマス発電)を皮切りに、青森県弘前市(太陽光)、長野県企業局(水力)、新潟県十日町市(地熱)とネットワークを広げ、2021年8月には新潟県津南町(小水力)と連携・協力協定を締結した。
■ブロックチェーン技術で電力の利用実態を可視化
2021年9月現在、川場村は区内40世帯に、弘前市は60世帯に、長野県は区立保育園などに電力を供給。十日町市と津南町についても、今後募集を始めるという。
一般家庭への電力小売りは「みんな電力(10月に「UPDATER(アップデーター)」に社名変更予定)」が行い、同社のブロックチェーン技術によって「どの電力を、どの世帯が、どのぐらい利用しているか」を可視化した。
世田谷区の人口(約92万人、約50万世帯)を考えると、今後の普及に向けたポテンシャルは高い。実際に区民に行なった意識調査(2018年)では、40.2%が「これから再エネを利用したい」と回答した一方で、自治体間連携の認知度は5.4%にとどまった。
9月7日には、区民らを対象にしたオンライン会議「自然エネルギー活用による自治体間ネットワーク会議〜都市と地方をつなぐ電力のススメ」を開く(参加申し込みはすでに締め切り)。こうしたPR活動を通し、さらなる普及拡大が期待される。
連携先の自治体が得られるメリットも少なくない。川場村では木質バイオマスボイラーの燃料に森林の手入れで発生した間伐材を利用し、発電時の排熱をイチゴの栽培に活用する。
都市部への再エネ電力供給を通して地域産業も活性化できる。こうした取り組みは世田谷区以外にも広がりそうだ。