大丸松坂屋の不要衣類引き取り、約1200トン超に

■記事のポイント
①大丸松坂屋が2016年から取り組む不要衣類回収、7年で1274tを回収した
②きっかけは2014年、静岡店でのブランド横断型の大回収キャンペーンだった
③今後は、回収量を増やすだけでなく業界全体で地球環境の負荷軽減へ

大丸松坂屋百貨店は2016年からリサイクル・リユース活動「ECOFF」(エコフ)を展開する。大丸松坂屋の各百貨店で、不要となった衣類などを回収して再生する取り組みだ。2022年5月現在の回収量は累計436万点、約1274tに達した。本社営業企画部の永井滋部長は「業界全体で環境負荷軽減に努めたい」と今後の展開に意欲を見せる。(オルタナ編集部・萩原哲郎)

認知度が高まって年々参加者を増やす

「エコフ」は不要となった衣服や靴、バッグなどを大丸松坂屋の百貨店で回収して再生する取り組みだ。たとえばポリエステル衣料はPET樹脂に生成し、ポリエステル生地に再生する。

約2万kgのPET樹脂を生成した場合、石油由来のものに比べてGHG(温室効果ガス)を約70t削減することができる。またウールや綿などの素材も工業用ウエスとして再利用したり、補助燃料として使う。

回収した衣類の状態が良好であれば、リユースする。その場合には、そのまま利用できる製品として海外へ再利用を目的に輸出している。

同社は2016年からリサイクルキャンペーン(各5~7日間)をこれまで12回開いた。キャンペーン参加者には引き取り点数1点につき電子クーポン1100円分(紙のショッピングサポートチケットの場合1000円分)を進呈する。クーポンを使用しなかった場合には寄付することも可能だ。

活動を通して事業上のメリットも現れている。取り組みに関するメディア露出が増加し、認知度の向上や参加者増につながった。同社の「サステナブルな活動」のひとつとして認知されるに至った。またクーポンの発行によって、新たな購買行動につながった。クーポンの利用は税込1万1000円以上の購入で使える仕組みだ。

クーポンは単純計算で43億円以上発行した形だが、その分、来店頻度が高まったほか、リサイクル・リユースからの収入などもあり、同社にとって大幅な持ち出しにはなっていないと見られる。

■きっかけは松坂屋静岡店でのキャンペーン

「エコフ」が始まったきっかけは2014年に松坂屋静岡店で行ったブランド横断型の大回収キャンペーンだった。2009年ごろからアパレル各社の回収キャンペーンが始まった。一方で回収対象はそれぞれのブランドの製品に限られる、などの課題があった。キャンペーンではブランドを問わず回収するとともに、買い物に利用できるサポートチケットを配布した。

このキャンペーンを手掛けた本社営業企画部の永井滋部長は「好評を博した」と振り返る。2016年に本社へ異動になったことを機に、キャンペーンの全国的展開を始めていった。

■オリジナル回収バッグやイベントで認知度高める

周知にも力を入れてきた。2018年にはオリジナル回収バッグのチャリティ販売を行った。テーマは「回収キャンペーンやエコな活動もおしゃれに!」だ。回収物を向上へ運搬する移動用段ボールを専用の回収袋にすることで、効率化と資源削減にも取り組んだ。

2019年には年2回のキャンペーン以外に、クーポンを進呈しない常設回収ボックスを基幹店に設置。夏休みのイベント「ECOFFのがっこう」や、ファッションイベントへの出展も行った。これらの取り組みが功を奏し、年々参加者を増やしてきた。

2020年からのコロナ禍で回収キャンペーンもリニューアル。それまでは回収点数をスタッフがカウントしてきたが、ボックスが回収点数を自動でカウントする非接触型の回収ボックスを開発した。

■地球環境への負荷軽減を業界全体で

コロナ禍が拡大してから、感染症対策で常設の回収ボックス設置を取りやめてきた。非接触型の回収ボックスを開発したことで「常設回収の復活に向けて検討していきたい」(永井部長)とする。

2021年には新たな取り組みもあった。「コスメdeエコフ」だ。化粧品容器を回収してリサイクルしよう、という思いからキャンペーンが実施された。

実際にキャンペーンを行うと課題も見つかった。例えば容器のなかに残留物があるとリサイクルできない。また容器のプラスチックの成分がわからないと再生品の強度が落ちる。販促スタッフの今永順氏は「次のキャンペーンを開催するまでに、これらの課題を解決する必要があります」とする。

同社では「エコフ」の活動について回収量のKPIを定める。ただ永井部長は「回収量を追うだけでなく、メーカーを含めて業界全体で地球環境への貢献につながるような活動にしていきたい」と明かす。静岡店から全社一丸となり、そして会社の枠を越える活動となるかに期待したい。

2014年から不動産業界専門新聞の記者職に従事。2022年オルタナ編集部に。

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キーワード: #CSR#リサイクル#環境

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