記事のポイント
①サントリーは2050年に「ネットゼロ」を目指すが、課題はスコープ3
②同社のGHG排出量のうちスコープ3が占める割合は9割(2021年度)に及ぶ
③対応策として、世界初のリサイクルアルミ材でつくった缶製品を発売へ
サントリーはリサイクルアルミ材を武器に2050年ネットゼロに挑む。同社の温室効果ガス(GHG)排出量の約9割が原料調達先のサプライヤーが排出するスコープ3だ。製品に使うアルミをリサイクルアルミ材にすることで、通常のアルミ材と比較して GHG排出量を約60%削減した。(オルタナS編集長=池田 真隆)

「カーボンニュートラルに向け、 お取引先様との共創を推進していきたい」。サントリーホールディングスの藤原正明・執行役員 サステナビリティ経営推進本部副本部長は31日に開いたオンライン会見でこう強調した。
取引先との「共創」を強調した理由は、スコープ3の排出量を削減するには自社だけではどうにもならない領域があるからだ。スコープ3は、「スコープ2以外の間接排出量」を指す。
温室効果ガス排出量の算定と報告の国際基準「GHGプロトコル」は、スコープ1を自社の活動に伴う「直接排出」と定義した。スコープ2を「エネルギー起源の間接排出」とした。
スコープ1も2も、自社の排出なので、削減できるかは自社次第だ。一般的にはスコープ1は、燃料の排出なので、 GHGを排出しないバイオマスなどに切り換える。スコープ2はエネルギー起源の排出なので、再生可能エネルギーへの切り替えが有効だ。
一方、スコープ3は自社のコントロールが及ばない範囲も含んでいる。例えば取引先から原料を調達したとする。その取引先がその原料を製造するまでに排出した量を指すのだ。そのため、取引先の協力がないとスコープ3の削減は進まない。GHGプロトコルでは、このスコープ3を上流から下流まで15のカテゴリーに分けた。
排出量のうち、スコープ3が大半を占める企業は多い。サントリーの2021年度の GH G排出量は約721.8万トン。そのうちスコープ3が9割以上の680万トンだ。
同社は2050年までにスコープ1から3を含めたバリューチェーン全体でのGHG排出量ゼロを掲げる。
この目標に向かって、ペットボトルに関しては、ボトルtoボトルの水平リサイクルなどに取り組んできた。
この度、アルミ材のリサイクルを強化した。UACJ(東京・千代田)と東洋製罐グループホールディングス(東京・品川)が共同で製造した、リサイクルアルミ材を採用した。
基幹ブランドの一つ「ザ・プレミアム・モルツ」ブランドに使い、9月6日から数量限定で発売する。リサイクルアルミ材を100%使った缶は世界初となる。
リサイクルアルミ材を100%使ったことで、通常のアルミ缶と比較して、CO2排出量を約60%削減した。
同社のアルミ缶の使用量は約7.2万トン(2021年度)に及ぶ。アルミ缶の国内消費量が約33.1万トンなので、その量は約2割に当たる。