■記事のポイント
①アシックスは温室効果ガス排出量を最小にしたスニーカーを発表した
②MITとの共同研究がきっかけ、2050排出量実質ゼロへ前進する商品に
③消費者の関心は高く、業界の環境負荷低減の更なる取り組みの推進も

アシックスは温室効果ガス(GHG)排出量が最小となるスニーカー「GEL-LYTE Ⅲ CM1.95(ゲルライトスリーシーエム1.95)」を発表した。2023年より販売を開始する。材料調達と製造、輸送、使用、廃棄で排出される温室効果ガスは1.95㎏で、排出量を公表するスニーカーのなかで最小となる。同社は2023年までに「温室効果ガス63%削減」、2050年までに「温室効果ガス排出量実質ゼロ」を掲げる。新スニーカーはその目標の実現への歩みを進める。(オルタナ編集部・萩原 哲郎)
アシックスは2010年からマサチューセッツ工科大学と共同で、フットウエアの生産活動でのCO₂削減に関する研究を進めて、2012年に研究結果を得た。
具体的には材料調達と製造、輸送、使用、廃棄に至るまでのバリューチェーン全体のCO₂排出量の測定と分析、そしてCO₂削減方法に関する分析と改善策の研究に取り組んだ。今回の新製品ではそこで得た知見をもとに研究を重ね、開発した。
■材料調達と製造では従来品に比べ80%削減
ゲルライトスリーシーエム1.95は製品のライフサイクルでCO₂排出量の大幅な削減を実現した。たとえば材料調達と製造では従来製品と比較して80%削減になったという。
排出量削減に向けては、16にわたる取り組みを行った。そのなかでも中菱したのが、スニーカーのミッドソール(甲被と靴底の中間クッション材)と中敷きに使用しているカーボン・ネガティブ・フォームの開発だ。サトウキビなどを原料とした複数のバイオベースポリマーを配合した。サトウキビは成長過程でのCO₂吸収量は、フォーム材作製に必要な工程に由来するCO₂排出量を上回る。環境負荷低減と履き心地を両立した。
主要な甲被と中敷には環境負荷の低い技法で染色したリサイクルポリエステルを使用した。甲被の補強パーツには廃棄ロスのすくないテープ形状パーツを使用。製造工程における再生可能エネルギーの使用や、バイオ燃料を使った輸送、委託先工場でのリサイクル施策などで、最小の温室効果ガス排出量を実現した。
■気候変動がスポーツに影響
スポーツシューズを主に展開するアシックスにとって、気候変動はリスクとなる。異常気象によって、スポーツの試合が中止するケースがある。
アシックスでは創業哲学「健全な身体に健全な精神があれかし」を表すブランド・スローガン「Sound Mind,Sound Body.」を掲げる。吉川美奈子・サステナビリティ統括部長は「このスローガンの実現に向けて環境負荷低減は不可欠。2015年を基準年に2030年スコープ1~3で63%削減、2050年に実質ゼロを目指す」と話す。
環境負荷低減に寄与するスポーツシューズには消費者の関心も高まる。「グローバルでの関心は非常に高く、日本でもより多くの消費者に手を取ってもらえれば」(吉川氏)。また、業界全体の環境負荷低減に向けた更なる取り組みも推進していきたい考えだ。
今後は新商品の温室効果ガス削減に寄与した技術やノウハウの、既存ラインアップへの応用が注目を集めそうだ。
Your point of view caught my eye and was very interesting. Thanks. I have a question for you.