記事のポイント
①世界最大の石炭輸出国インドネシアが再エネ利用促進に向けた新規制を発表
②2025年までに再エネ比率を23%にまで高め、石炭火力発電所の新規建設は不可に
③計画中の発電所は、運転開始後10年以内に排出量の35%削減を求める
世界最大の石炭輸出国であるインドネシアは9月14日、再生可能エネルギーの利用を奨励する規制を大統領令として発した。インドネシアは世界10位のCO2排出国だ。この規制の中で、一部の石炭火力発電所を早期に閉鎖するほか、2025年までにエネルギー構成比に占める再エネ比率を、現状の12%から23%までに高める目標を掲げた。現在、インドネシアの電力需要の約60%は石炭由来の電力で賄われている。(北村 佳代子)

インドネシアは昨年、他の数十カ国とともに、地球温暖化を産業革命以前の水準から1.5度未満に抑えるために、石炭使用を段階的に減らすことを約束し、2060年までにカーボンニュートラルを達成するという目標を掲げた。
14日に公表された新規制によると、一部の石炭火力発電所の早期閉鎖も計画されており、閉鎖に伴い発生する損失を、インドネシア政府が補填する支援策も検討していくという。
新規制の下では、新たな石炭火力発電所の建設はできなくなるものの、すでに計画が進行中のものや、天然資源を加工する形で一体化させたものは、計画通り進めることができるとされている。
ただし、新たな石炭火力発電所による排出量は、運転開始から10年以内に、2021年の石炭火力発電所の平均排出量から35%削減しなければならず、またその操業も2050年までとされた。
また、インドネシア政府は、投資促進のために、地熱、水力、太陽光といった再生可能エネルギーの新価格体系を設定した。これまでエネルギー事業者は、価格設定の合意に至るまで、国営電力会社との間で長期にわたる交渉が必要だった。
ESG Newsによると、インドネシア地熱協会(INAGA)のプリヤンダル・エフェンディ会長は、今回の規制は、固定価格制の代わりに上限価格制を採用するなど、業界側からの提案とは異なっており、より詳細な情報が必要と語った。「半年後には、これが良いか悪いかを判断できるだろう」。
再エネへの投資促進に向けて、インドネシア政府は、融資制度などの財政的な優遇措置や森林地帯の許認可の緩和なども実施していく。
国際エネルギー機関(IEA)は9月2日、世界で4番目に人口の多いインドネシアが、石炭依存を減らし、再エネ利用を推奨していくためには、透明性があり競争力のある価格体系の導入や、進行中のプロジェクトも含めた政策改革を確実に行う必要があるという内容のレポートを発行している。