記事のポイント
- 厚労省が離職率が50%に及ぶ児童養護施設の雇用改善へ経費を助成する
- 採択団体はこれまで施設の検索サイト構築や就職説明会などを開催
- 各施設が担えない情報発信や離職率改善に向けた取り組みを進める
厚生労働省は、人材不足が深刻な児童養護施設などの雇用改善を目的とした「広報啓発活動」への経費助成に乗り出した。「社会的養護魅力発信等事業」として公募し、このほど採択されたのはNPO法人チャイボラ(東京・豊島)。同NPOはクラウドファンディングを通じて資金を調達し、施設の検索サイト構築や、就職説明会開催といった活動を行ってきた。事業者として採択されたことについて、代表の大山遥さんは「(補助金で)今後さらに支援の質と幅を広げることができる」と話す。(寺町幸枝)

■まとまった補助金で迅速な人材確保へ
2021年度に児童虐待への相談対応件数は20万件を超えたという。社会的養護の重要性は増す一方だが、児童養護施設等で働く人材の確保や専門人材の育成はなかなか進まない。児童養護施設で働く職員の離職率は50%に及ぶという調べもある。
今回、厚労省が新設した「広報啓発活動」に対する公募について、厚生労働省子ども家庭局家庭福祉課担当者は、「各施設では採用広報に力を注ぐ余裕がないことも多く、学生等が社会的養護に関する情報に触れる機会も限られている状況だ。本事業を創設することにより、人材の確保と育成に取り組んでいきたい」という。
今回採択されたチャイボラだけでなく、各施設や他の民間団体がこれまでS N Sを通じて行ってきた児童養護施設等の役割や採用に関する情報発信について、担当者は「一定の効果が上がってきたことは認識している」という。今回、チャイボラには約1900万円の補助金が投入されるが、「今後も、さらに情報発信を後押ししたい」と続ける。
チャイボラは公募採択されたことでスタッフを増やし、各施設が担えない情報発信業務の肩代わりや、児童養護施設等で働く職員が長く就労するための後方支援に力を入れていく構えだ。
児童養護施設にとって、一人でも多くの人に関心を持ってもらって新規雇用につなげ、人材を適材適所に配置することが急務だ。公的補助でその迅速化が図れるか、チャイボラの活動に期待したい。