「亜臨界水処理」で水草をSAFや紙梱包材に:琵琶湖で実証実験

記事のポイント


  1. シナネンファシリティーズが提案する技術が滋賀県の支援事業に採択された
  2. 提案する資源リサイクル装置を活用し水草からSAFや紙梱包材の原料を抽出
  3. 将来的には自治体の廃棄物処理などに活用して「地域循環型社会」目指す

シナネンホールディングス子会社のシナネンファシリティーズ(埼玉・桶川)は、亜臨界水処理技術を活用した資源リサイクル装置の提案を本格化させる。このほど、同社の事業提案が滋賀県の「水草等対策技術開発支援事業」に採択された。琵琶湖に繁茂する水草からSAF(持続可能な航空燃料)や、たまごパック、青果物などの運搬容器として利用できる紙梱包材への再生を目指す。 (オルタナ編集部・萩原 哲郎)

注目を集める亜臨界水処理装置(画像はイメージ)

■「亜臨界水処理技術」とは

シナネンファシリティーズが提案したのが、「亜臨界水処理技術」の活用。

亜臨界水は臨界点(374℃、22.1MPa※)以下の高温高圧の状態の水を指す。大気圧下では水は100℃を超えると蒸発するが、密閉した容器のなかでは蒸発せずに温度と圧力が上昇する。(※メガパスカル、水道の水圧は0.15MPa~0.75MPa)。

亜臨界水状態になると水は電離霧状となり、電離した分子が活発に飛び回る。この分子が炭素と酸素と水素などの化合物である有機物を加水分解して、肥料やバイオマス燃料などの原料を抽出することができる。

この状態を活用する資源リサイクル装置の仕組みは、ボイラーから高温高圧の水蒸気を圧力容器のなかに送出し、そのなかに水草や生ごみといった有機物を投入する。圧力容器内ではかき混ぜられながら分子が活発に飛び回り、投入された有機物を分解する。

水草なら20分前後でセルロースを分解する。セルロースから紙梱包材の原料であるパルプやグルコースなどの糖を抽出できる。さらにその糖からSAFの原料となるバイオエタノールを生成できる。

この技術は日本ではすでに太平洋戦争中に研究され、1980年代に実用化した。しかし、国内では事業化が難しく、普及しなかった。シナネンファシリティーズでは「循環型社会を目指す社会のニーズに応えられる」と注目し、取り扱うことになった。

環境ソリューション事業部の麻生義継技術顧問は「水草だけでなく、生ごみ、家畜糞尿、駆除した有害動物、医療現場の感染性廃棄物など様々なものに活用でき、有機系廃棄物を資源として新たな資源に生まれ変わらせます」と話す。

■地域循環型社会実現へ、事業化を目指す

同社の提案に対しては自治体の注目も集める。同事業部の進藤裕司部長は「自治体はごみ処分で、ダイオキシンやCO₂が発生する焼却処分以外の方法を探している。今回の実証実験の発表後、数件の自治体から問い合わせがあった」と明かす。

同社は将来的に、亜臨界水処理技術を活用した装置を地域ごとに設置して「地域循環型社会の実現」を目指したい考えだ。進藤氏は「事業化に向けて、実証実験を重ねて1つでも多くの成功例を作りたい」と意欲を示した。

2014年から不動産業界専門新聞の記者職に従事。2022年オルタナ編集部に。

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キーワード: #リサイクル

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