国際環境 NGO グリーンピース・東アジアは 10 月 28 日、世界の大手電子機器メーカー10 社と東アジアのサプライヤー14 社の温室効果ガス(GHG)排出削減の取り組みについて報告書を発表した。日本では、電子機器メーカーとしてソニー、サプライヤーとしてキオクシア、シャープ、ジャパンディスプレイの 計4 社が対象となった。企業の公開情報をもとに分析した結果、日系サプライヤーの再エネ調達率が1%未満と群を抜いて低いことが分かった。(オルタナ副編集長=吉田広子)

世界の情報通信産業の電力使用量は 2020~2030 年の間に、60%以上増加すると予測されているという。
アップルやマイクロソフト、グーグルなどは業界に先駆けて自社の事業活動の再エネ 100%を達成するなど、早くから気候変動対策に取り組んできた。
しかし、電子機器業界のGHG総排出量を見ると、半導体やディスプレイ製造、最終組立を含むサプライヤーからの排出が 77%を占めていると推定され、サプライチェーン全体の脱炭素化を進めることが重要だ(出典:世界経済フォーラム「ネットゼロ・チャレンジ」)。
そこで、グリーンピース・東アジアは、実態を把握しようと、北米の環境 NGO スタンドアースと共同で調査を行い、気候変動対策の「目標設定」「取組状況」「情報開示」「アドボカシー(政策提言など)」の4つの指標で対象企業の評価を行った。
その結果を報告書「サプライ・チェンジ――大手消費者向け電子機器メーカーとサプライヤー企業の気候変動対策目標と再生可能エネルギー取組状況の分析」にまとめた。
対象企業は、次の通りだ。これらの企業の 2021 年の電力消費量は、計 17 万 GWh で、アルゼンチンの年間電力消費量以上に相当する。
●大手消費者向け電子メーカー10 社
アップル、グーグル、マイクロソフト、HP、アマゾン、デル、レノボ、LG 電子、ソニー、サムスン電子
●サプライヤー(東アジア)14社
インテル、TSMC、サムスン電子、キオクシア、SK ハイニックス、サムスンディスプレイ、LG ディスプレイ、シャープ、BOE、ジャパンディスプレイ、ホンハイ、立訊精密工業、ペガトロン、Goertek
総合評価で最も評価が高かったのは、電機メーカーはアップルのB、サプライヤーはインテルのC+だった。
報告書は、アマゾン、マイクロソフト、グーグル、ソニーは、野心的なGHG削減目標と再エネ目標を掲げているが、サプライチェーン全体では化石燃料にいまだ依存していると指摘する。
ソニーは2040年にサプライチェーン全体のカーボンニュートラルを目標としているものの、サプライヤーに対する再エネ目標を設定しておらず、自社事業に対する再エネ調達率は14.6%とメーカー10社中2番目に低い数値となった。
サプライヤーに対しては、LGディスプレイ、BOE、ペガトロン、Goertek、ジャパンディスプレイがネットゼロ目標、または再生エネ目標を設定していない点を指摘した。
サプライヤーの再エネ比率は、インテルが最も高い82%で、その次がサムソンの20%、日本企業のキオクシア、シャープ、ジャパンディスプレイはいずれも1%以下と総じて低かった。
こうした状況を踏まえて、報告書では、脱炭素に移行するためには、サプライヤーへの支援が重要だとまとめている。報告書の全文はグリーンピース・ジャパンのウェブサイトから無料でダウンロードできる。