記事のポイント
- 環境省と経産省、GHG排出量算定で「一次データ推奨」で足並み揃う
- 一連のプロセスで、企業のGHG排出削減努力を反映させる
- 民間も追随する見通しだが、業界や企業の独自事情を訴える声も
環境省と経済産業省はこのほど、企業活動における温室効果ガス(GHG)排出量「スコープ3」の算定において「一次データ活用」の推奨で足並みを揃えた。企業のGHG排出削減努力を反映させることに主眼を置く。企業など民間側もおおむね追随する見通しだが、業界や企業の独自事情を訴える声もある。 (オルタナ編集部・萩原 哲郎)

温室効果ガス(GHG)排出量「スコープ3」の算定においては、これまで、産業連関表に基づく業種平均の排出係数や業界団体が定めた数値など「二次データ」を使用してきた。いわば原単位を元にした「推計値」である。一次データとは、サプライチェーン各段階の現場から集めた「実測値」を指す。
しかし、GHG算出の公式手順書「GHGプロトコル」では15のカテゴリの中から、優先順位の高い活動に対しては「高品質の一次データを集めるべきである」との基準がある。日本は、二次データからの脱却が国際的に見ても急務となっていた。
さらには、各方面から「スコープ3の情報開示」を促す傾向が日増しに強くなった。まず、SBTによる「ネットゼロ」目標だ。SBTはそれまで1.5℃目標を最新のスタンダードにしていたが、2021年10月から、新たに「ネットゼロ目標を導入し、スコープ3の算定においても、一次データの使用を排出側に求めた。
22年3月には米証券取引委員会(SEC)が上場企業に対して気候関連情報の開示を求める「気候関連開示規則案」を公表した。GHG排出量についてスコープ3の目標を設定している、あるいは重要である上場企業に対しては、スコープ3の開示を求める。
こういった制度は欧州でも議論が進む。22年3月にはサステナビリティに関する報告の国際的な基準を策定するISSB(国際サステナビリティ基準委員会)が開発する新しい基準案を公表。「スコープ3排出量の報告」を企業の開示要求事項の一つとして設けられた。国際的には「開示」へ踏み出そうとする。
日本が焦点を当てるのは「一次データ」だ。たとえば環境省は24年3月末までにスコープ3算定に関するガイドラインの改定を行う。一次データの使用の推奨を強めていくとみられる。経済産業省はカーボンフットプリント(CFP)についてガイドラインを23年3月末に公表予定で、「一次データ推奨」で足並みが揃った。
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