記事のポイント
- UNEPと米 S&P グローバルが「ネイチャー・リスク・プロファイル」を発表
- 企業の自然への影響と依存度を分析する新たな方法論だ
- 金融機関が自然関連のリスクを測定し、対応できるようにするのが目的だ
国連環境計画 (UNEP) と米 S&P グローバルはこのほど、企業の自然への影響と依存度を分析する新たな方法論「ネイチャー・リスク・プロファイル」の立ち上げをダボス会議で発表した。金融機関が自然関連のリスクを測定し、対応できるようにするのが目的だ。世界経済フォーラムは、「生物多様性の損失」を今後10年間のグローバルリスクの4番目に位置付けている。(オルタナ副編集長=吉田広子)

世界のGDP(国内総生産)の半分以上は、植物や動物、水、空気といった「自然資本」に依存し、「生物多様性の損失」は経済にも大きな影響を与える。
世界経済フォーラムが発表した「グローバルリスク報告書 20023年版」によると、「生物多様性の損失」は、「気候変動対策の失敗」「気候変動への適応」「異常気象」に次ぐ、今後 10 年間で 4 番目に深刻なグローバルリスクとなっている。
こうした危機感から、生物多様性の保全に向けた国際的な枠組みづくりが進み、2022年12月には新たな世界目標「昆明・モントリオール生物多様性枠組」が採択された。
2030年までに自然の損失を止めて回復に転じる「ネイチャーポジティブ」を目指し、23の目標を策定。企業にも、生物多様性に対するリスク、依存関係、影響を定期的に評価し、透明性をもって情報開示することを求めている。
UNEPらの新しい方法論「ネイチャー・リスク・プロファイル」は、企業や投資家が自然関連のエクスポージャーを特定して、定量化できるようにする指標とデータの概要を示す。
この方法論は、生物多様性に対する企業の影響から生じるリスク、生物多様性への企業の依存から生じるリスク、生物多様性地域への近接性による潜在的なリスクなどをカバーしているという。
「自然関連財務情報開示タスクフォース」(TNFD)が2021年4月に発足し、2023年後半に最終的な提言が発表される予定だ。 「ネイチャー・リスク・プロファイル」はTNFDの開示フレームワークの実装をサポートするとしている。
「S&Pグローバルサステナブル1」のプレジデントであるリチャード・マティソン博士は「この新しい方法論の開発は、企業や投資家が自然に関連するリスクをより良く理解し、分析し、行動するためのカギとなる。方法論はオープンアクセスであり、利害関係者によって開発および改良される」とコメントした。