記事のポイント
- 横浜市社会福祉協議会は市内の「生理の貧困」状態にある女性の支援を行う
- 同会の調査では、生理用品の購入に苦労したことがある人は8割にのぼった
- 同会は国際女性デーに合わせ「ナプキン」と「月経カップ」を提供する

「生理の貧困」とは、経済的な理由、または、パートナーや父親の無理解により、生理用品の購入を制限せざるを得ない状態の総称である。問題は経済面にとどまらず、衛生状態の悪化、婦人科疾患の発見が遅れるなど、「健康への悪影響」「社会参加機会の損失」にも波及している。コロナ禍を経てその影響はさらに大きくなっており、横浜市社会福祉協議会が運営する「ヨコ寄付」は、横浜市男女共同参画センターと連携し、2021年から横浜市内の「生理の貧困」状態にある女性の支援を行っている。(照井敬子)
医療や支援へのアクセス機会を増やす
2021年末に「ヨコ寄付」として吸水ショーツの配布と困りごとのアンケートを実施。生理用品の購入に苦労したことがあると答えた方が8割にのぼった。また、ホルモンバランスの乱れ、月経に伴う体調不良への不安も多く、約2割の方は「どこにも誰にも相談できていない」と回答した。医師や薬剤師の専門性を活かした健康相談のニーズが大きいにも関わらず就業による制約、不安などから医療機関へアクセスできない、していない女性が多いことも課題として認識された。
そこで、2022年度の取り組みは、生理用品の配布に加え、SNSを活用した薬剤師・管理栄養士による相談窓口を開設することとなった。匿名性を保ちつつ健康に関するアドバイスを実施し、状況に応じて医療機関以外の支援先に繋げる。
「私の生理に向き合おう」プロジェクト
生理用品の平均的な購入費用は月額1000円程度だが、出血量や痛みの程度により医薬品購入などで増加することもある。経済的な理由のほかパートナーや父親(ときに母親)の無関心・無理解により、購入できないケースもあるという。無関心や無理解は、男性視点で社会の仕組みが構築されていることの弊害であろう。
思春期に対する配慮ではあるものの、生理に関する授業はクローズで行われており、社会的にも「生理や出産は病気ではない」との古い考えが根付いたままで、災害避難所においても「支援備品」ではなく「自己管理するもの」として扱われているケースが少なくない。
このような「空気」を感じ、女性たちが無意識に生理や自分のカラダについての話題を「恥ずかしいもの」「人と共有しないもの」としてしまっているのであれば、それはとても残念なことである。
ヨコ寄付の国際女性デー(※1)特別企画の実質的なテーマは「生理の貧困」であるが、込められたのは「自身のカラダをもっとよく知って、大切にしてあげよう」という思いである。
ギフトとして用意された生理用品は、「ナプキン」と「月経カップ」の2種類となっており、使い慣れた「ナプキン」を選択する方が圧倒的に多いと思われる。
しかし、経血量や期間、出産経験の有無、年齢、ライフスタイルなどによっては、月経カップを利用することで生理の時期をより快適に過ごすことも可能であるので、「私の生理」に向き合い、「ナプキン」と「月経カップ」のどちらがより自身に合っているか、選択の機会にしてほしい。
月経カップの多様な可能性
シリコーン製の月経カップは、繰り返し使用可能なことから長期で考えると経済面と環境面で負荷が小さい。もちろんこの点だけでも選択する意味があるが、実は最もメリットと考えられるのはその快適性だ。ほとんどの女性が、学校や会社、子育てや趣味の場でナプキンの交換や漏れ、肌荒れなどを気にしながら過ごした経験があるのではないだろうか。
「ヨコ寄付」で提供する米アニガン社製月経カップは、心臓人工弁やコンタクトに使用される医療用シリコーン100%で耐熱性、耐久性に優れているため手入れをしやすい。ラテックスアレルギーを持つ人でも安心して使用可能だ。
販売元のインテグロ社は、「女性ならではの健康課題によって社会活動が制限されない、もっとオープンに語ることができる環境をつくりたい」というビジョンを持ち、個々のライフステージや不安に寄り添い、商品の選択から使いこなせるようになるまで丁寧なサポートを行っている。ぜひ、国際女性デーをきっかけに「私の生理」に向き合って頂きたいと思う。
※1国際女性デー
「女性の社会参加と地位向上を訴える」と「女性の素晴らしい活躍、勇気ある行動を称える」ことを目的に、1975年に国連により毎年3月8日を「国際女性デー」に制定した。