記事のポイント
- LGBTQ差別を禁止する法制化の機運が高まってきた
- 日本コカなど13社は、岸田文雄首相宛に法整備を求める要望書を提出
- ジャーナリストの北丸雄二さんは「同性婚は5年以内に実現するのではないか」
荒井勝喜元首相秘書官の差別発言を機に、LGBTQへの差別を禁止する法制化の機運が再び高まってきた。日本コカなど13社と支援団体はこのほど、岸田文雄首相宛に法整備を求める要望書を提出。1990年代から米国でLGBTQを取材してきたジャーナリストの北丸雄二さんは「選択的夫婦別姓が認められれば、同性婚もそう遠くはない。5年以内に実現するのではないか」と見解を示した。(オルタナ副編集長=吉田広子)

「例えば、黒人や在日朝鮮・韓国人、女性などに『隣に住んでいたら嫌だ』と発言すれば、それが大問題になることは容易に想像できるだろう。人種や出自、宗教、ジェンダーに関する差別とLGBTQ差別は地続きにある。20年前であれば、荒井元秘書官の差別発言は、問題にならなかったかもしれない。日本は他国より20年以上遅れているものの、それでも大きく変わってきた」
こう話すのは、ジャーナリストの北丸雄二さんだ。北丸さんは、1993年に東京新聞のニューヨーク支局長として渡米し、米政権などを取材する傍ら、エイズやLGBTQについても取材を続けてきた。
北丸さんは、オルタナが2月21日に開いた読者向けセミナー「首相秘書官も更迭された『LGBTQ課題』の背景と歴史」に登壇し、米国と日本のLGBTQを取り巻く状況を解説した。
■90年代に米で「ゲイマーケット」が確立
米国では1990年代にLGBTQ差別が問題になる一方で、メディアやビジネス界はゲイたちの可処分所得の高さに着目。「ゲイマーケット」が確立し始めた。米アメリカン航空はゲイ専門部門を立ち上げ、ゲイイベントへの格安航空券の提供や団体旅行の割引券などの提供を始めた。
1995年4月には、ニューヨークで初めて「ゲイ・ビジネス・エキスポ」が開かれ、保守派のルドルフ・ジュリアーニNY市長(当時)でさえも、祝辞を述べたという。
「企業にとって、LGBTQは大きなマーケットであるだけではなく、優秀な人材を採用する上でも、制度を整えて、『包摂』するのが得策だった。政治的な論争や宗教的な思惑を超えて、資本の論理が働き、企業がLGBTQへの差別撤廃を先導していった」(北丸さん)
■法整備がないのはG7で日本だけ