
都心と郊外の二拠点居住などライフスタイルが多様化する中、東京・港区の「元麻布農園レジデンス」(運営・株式会社スローライフ/片岡義隆代表)では、菜園付きシェアハウスとし、都心に住みながら地方の生産者から有機農を学ぶ拠点交流の仕組みを提案中だ。
元麻布は、大使館も点在する高級住宅エリアだ。もともと4戸だった外国人用賃貸マンションを16室のシェアハウスに改装し、約50平方メートルのラウンジには共用のキッチンを備え、さまざまなイベントにも利用されている。
南側の敷地は駐車場だった場所を8畝の菜園とし、土づくりから始めた。うち1畝はシェアハウス住民専用で、ネギやチンゲンサイなど数種類の野菜を育てている。「コミュニティ形成のためのツールとしてほしい」と片岡氏はいう。野菜の種類は住民の協議で決めた。
農講座用の畝では、新潟で農業を営む大越正章氏(全国農業青年クラブ連絡協議会会長)を講師とした「土にふれ、農を知る!」というテーマの連続講座を開催中。
約4カ月かけて育てた野菜は収穫後、新潟で捕った鴨とともに鍋料理となる。たくあんなどの保存食づくりも学ぶことができ、ラウンジ活用で住人との関係性も生まれる。
千葉県東金市で無農薬農業を営むあいよ農場による「キッズ土育」には近所の子どもたちが集う。その他、近隣住人を対象としたレンタル菜園(1平方メートル、月額9450円)も35区画ある。
講座では実際に使用する肥料が分かるので、消費者に対する情報公開や農家のプレゼンテーションの場となる。講師がつくった野菜を購入することも可能で、マルシェも企画中だ。
「自然や近所の人とふれあう豊かな都市生活を提案したかった」と片岡氏。
また、「地方の問題を解決する役目が都市にはある」という考えから、農村部の害獣問題を考える猪鍋のイベント「森を守る食の会」を11月18日に同ラウンジにて開催、参加者募集中だ。スローライフが提案するライフスタイルを体験できる機会となるだろう。(オルタナ編集部=有岡三恵)