
ドイツ電力最大手エーオンは、ドイツの脱原発政策について政府を来年早々にも連邦憲法裁判所に提訴する考えを明らかにした。
国内2位のRWEも同様に提訴を検討、4位のバッテンフォールは既に国際仲裁裁判所にドイツ政府を提訴する方針を決めている。
ドイツでは3月の福島原発事故以降、国内の原発8基が操業を停止、政府は2022年を最終年度に国内の残り9原発を段階的に廃止することを決定した。
エーオンはじめ各社は、この措置が基本法(ドイツの憲法)にある私有財産保護原則に抵触するとして、原発早期停止で生じた損失の補償を求めている。
エーオンとRWEは残存原発に課せられた核燃料税の合憲性についても既に政府を提訴したが、これについては10月に財政裁判所が一部払い戻しを認める判決を出している。
脱原発により、電力各社には大きな財政負担が生じているのが実情。エーオンが先日発表した第3四半期決算では償却前営業利益が66億ユーロで前年同期比39%減となっており、損失分の約三分の一を原発2基の早期操業停止による営業損失と核燃料税が占める。
純利益は16億ユーロ、前年比64%減という結果で、同社では全世界で社員11000人を削減する再編計画も進行中だ。他社の決算も同様に厳しい内容となっている。
こうした状況にあって、地域密着型の小規模電力会社には活路が開けており、特に100%グリーン電力を供給する企業では、地域を越えて全国展開する動きが顕著だ。
だが一方では、大手も生き残りをかけ、中小が参画しにくいオフショア風力発電など大規模施設の建設に関わるほか、グリーン電力蓄電のための新技術開発、自動車メーカーとタイアップした電気自動車充電プロジェクトなどを多角的に進めている。
ドイツ政府が目標とする2020年時点のグリーン電力比率35%は、こうした大手の貢献なくしては達成不可能であるため、今後の各社の自然エネ事業拡充に期待が寄せられている。(デュッセルドルフ=田中聖香)