記事のポイント
- 「カーボンニュートラル」に向けて化石燃料業界では不透明な施策が広がる
- 「CO2を出さない」と謳う火力発電所、CO2そのものを輸出する計画も
- 「カーボンニュートラルなLNG」もクレジット頼みだ
政府は2050年「カーボンニュートラル」を目指すが、化石燃料業界には「不透明なカーボンニュートラル」が広がる。自称「CO2を出さない」火力発電所はCO2そのものを輸出する計画まで出てきた。カーボンニュートラルな液化天然ガス(LNG)もクレジット頼みだ。(オルタナ編集部・萩原 哲郎)

「ほぼすべての国から水素、アンモニア、CCUS(炭素の貯留・利用)への強い期待が表明された。こうした技術のコストをいかに下げることができるかが、脱炭素化への課題だと認識している」
3月4日、都内で開いたアジア・ゼロエミッション共同体(AZEC)閣僚会合終了後の記者会見に出席した西村康稔経産相はそう言い切った。政府は、「ゼロ・エミッション火力」に関する技術を、アジア圏に売り込む戦略を持つ。
アジア圏のエネルギー起源のCO2排出量は世界の約6割を占める。経済成長も著しいアジアの国々に、これらの技術を広げ、日本の経済成長にもつなげたい考えだ。
「ゼロエミ火力」は、燃焼時にCO2を排出しない水素やアンモニアを燃料にして動かす。水素もアンモニアも製造時にCO2を排出するが、それは地下で貯留する。貯留したCO2の利用(CCUS)も模索する。
2月10日に閣議決定した政府の「GX推進法案」では、「GX経済移行債」を盛り込んだ。この移行債は10年で20兆円規模の国債を発行する。その内、水素・アンモニアの供給網支援に約7兆円超、CCUSに約4兆円超を充てる。
■CO2の貯留は災害リスクも