記事のポイント
- 1970年に1人の学生が始めた「アースデイ」が、世界157か国に広がっている
- アースデイは、それぞれが地球や環境のことを考えて行動する日だ
- アースデイ ジャパン ネットワークが始動、COP28に向けた取り組みも準備
4月22日に迎える「アースデイ(地球の日)」は1970年に米国の一人の学生が始めたムーブメントだ。この運動はすぐに全米へ広がり、現在では世界157か国に広がっている。アースデイは、それぞれが地球や環境のことを考えて行動する日だ。日本では1990年に連絡所が開設し、認知度が向上した。22年にはアースデイ ジャパン ネットワークが有志で発足。EARTHDAY.ORGの公認を受けたことで、4月22日から一般社団法人として本格始動する。(アースデイ ジャパン ネットワーク共同代表=谷崎 テトラ)

■アースデイ(地球の日)とは
母の日があって、父の日があるように、地球の日をつくりたい。
1970年、アースデイは、スタンフォード 大学のデニス・ヘイズというひとりの学生からはじまった。
当時はベトナム戦争が起き、国家間の対立や人種問題、環境破壊が社会問題化しはじめていた時代だ。アポロ8号から送られてきた「地球の出(EarthRise)」の映像は、地球全体(ホールアース)で思考する、人類の新たな視点を提示した。
地球全体を生命圏とみる「ガイア仮説」や「宇宙船地球号」という視点が生まれたのもこの時期である。
「地球」という惑星を人類のアイデンティティの軸として、地球を愛し、感じる、共通意識が芽生えていった。
4月22日というなんでもない日を「アースデイ(地球の日)」として祝おう、という動きは、またたくまに全米の学生の間にひろがった。
しかし、アースデイは単なる「記念日」ではない。それぞれが地球や環境のことを考え、行動するムーブメントである。多様な団体や企業や個人の環境行動が、アースデイをきっかけにネットワークされていった。
ひとりの学生からはじまったこのムーブメントは、やがて国際社会を動かし始めた。2009年の国連総会で、4月22日を「国際母なる地球デー」(International Mother Earth Day)とすることが採択される。
2016 年のアースデイには、気候変動問題に関する国際的な枠組み、パリ協定 が米国、英国、中国、およびその他120か国によって署名され、発効されるなど、 国際社会でも、アースデイの役割が高まっていく。
アースデイは現在、世界157か国の国や地域でのグローバルなアクションとなっている。そのプラットホームとしてEARTHDAY.ORGがある。
日本では1990年にアースデイ日本連絡所がスタートした。市民団体を中心にアースデイの認知はひろがっていった。
そして2001年にアースデイ東京が発足し、代々木公園を中心に、毎年、実行委員会形式でアースデイイベントを開催。コロナ前には10万人を超える日本最大級の環境イベントへと成長した。
現在、アースデイ東京は通年型の組織へと進化した。また日本全国で、地域ごとのアースデイイベントの開催がひろがっている。
しかしながら、これまで国内約40カ所でおこなわれてきたアースデイのアクションは、それぞれの団体や個人が主催しており、環境行動としてのつながりはなかった。
■2023年にアースデイ ジャパン ネットワークを設立
アースデイ ジャパン ネットワークは、全国のアースデイをつなぐネットワークとして2022年、有志により発足。誰もが自分ができる方法で、アースデイを表現し、協働するためのはじめての本格的な国内ネットワークである。
活動の柱はアースデイの普及啓発、そして全国アースデイのMAPづくりからはじまり、運営者のコミュニティとして、日本全国で誰もが参加できるオープンミーティングの開催、地域の取組みを全国規模で紹介するなどがある。
各地アースデイの立上げ支援、イベントの企画・運営サポート、USや他リージョンとの連携、そしてそれらの情報を提供するメディアプラットホームとしての役割も担う。
そして2023年、世界のアースデイのムーブメントをつなぐプラットホームであるEARTHDAY.ORGに公認され、4月22日の「アースデイ」の日に本格的に活動を開始することとなった。
グローバルな環境行動と、日本全国のアースデイアクションをつなげることをパーパスとしている。
EARTHDAY.ORGは、今年のテーマを「Invest in Our Planet」(地球に投資する)とする。
グローバルアクションとして「気候リテラシー」「木を植えること」「グローバルクリーンナップ」「プラスチックエンド」「サステナブル ファッション」など6つの地球的な課題に対して、各国、各地域における行動をよびかけている。
■準備を進めるDigitalArt 4 Climate JAPANとは
今後のアースデイの注目すべきポイントとして、COP26以降、議論されはじめたデジタル領域、いわゆるNFTやWeb3、メタバースなどと、脱炭素DXでのアースデイの可能性にもふれておきたい。
これは2021年イギリス・グラスゴーで開催されたCOP26にて立ち上がった「DigitalArt 4 Climate」というプロジェクトに端を発するものだ。文化と技術の力を通じて気候変動対策をエンカレッジし、支援するという、デジタルアーティストによるイニシアチブだった。
これはブロックチェーンテクノロジーを使用してアートを収集し、取引可能なデジタル資産またはNFTに変換し、気候変動対策へのリソースの動員を促すというものだ。「気候変動に挑む人類」というテーマで、デジタルアーティストが作品を提供した。
こういったアースデイの動きは、極めてDAO(分散型自律組織)的な動きであることが注目されている。
DAO型組織は、組織のビジョンに共感した個人が地理的制約を超えて集まり貢献するコミュニティだ。誰でも貢献の度合いに応じたトークン報酬を得ることができ、これまでの環境運動にない、新しい世代の環境行動の種が準備されているとも考えられる。
アースデイ ジャパン ネットワークでは、今秋のCOP28にむけて、DigitalArt 4 Climate Japanを準備している。DigitalArt 4 Climate Japanについては、近々アースデイジャパンネットワークのWEBサイトにて情報が公開される予定となっている。